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水道水と井戸水

ドクター畑地の診察室
ドクター畑地の診察室168.2022.11.27. 現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。 世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信! https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ***************************** 水道水と井戸水 昔、私が幼稚園の頃には、どこにも井戸があり、井戸水を利用することも多かったと思います。私の生まれ育った実家では、記憶が間違いでなければ、井戸水が出る蛇口と、水道水が出る蛇口2種類ありました。しかしながら、いつのころからか、井戸水が出る蛇口はなくなり、すべての蛇口が水道水となりました。 鈍感なこともあり、水道水を飲んでも全く違和感のない私ですが、人によっては、塩素の香りがして受け付けることができないという人もいるかと思います。 喀血と聞いて皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。昔、肺病(今でいうところの結核)を患った方は、何度も血を吐いて衰弱しました。(喀血は肺から出た血が口から出ること、吐血は消化管から出た血が口から出ることです)正岡子規しかり、樋口一葉しかりです。今、結核で喀血するほど悪化する方はあまり多くありません。おそらく、現在、喀血の原因としては、非結核性抗酸菌症という病気が最大の原因となっているのではないでしょうか。 非結核性抗酸菌症は結核と違い人から人には伝染しません。水回りに多い細菌であり、90種類以上の非結核性抗酸菌が知られていますが、人間に感染する多くの菌種は、M.aviumとM.intracelluraeの2菌種が圧倒的に多く、この2菌種あわせてMAC症と言います。この2菌種に感染する方は、女性が多いこと(水回りの仕事をすることが多いためかもしれませんが、はっきりとした理由はわかっていません)が知られています。 ある日のことです。A病院の外来に検診で胸部異常陰影を指摘され、受診した女性の患者Bさんがいました。レントゲン撮影、CT撮影を行ってみると、典型的なMAC症の画像であり、気管支鏡検査を行い、MAC[症と診断しました。患者さんと相談のうえで、MAC症の治療を開始したわけですが、話を聞いてみるとその方の母親もMAC症に罹患し、それが原因で命を失ったとのことでした。その方の父親も、生前喀血などの症状が認められたとのことで、MAC症とは診断がついていないもののかなり疑わしい状況です。 MAC症は遺伝する疾患ではありませんが、多少なりとも、なりやすい体質があると思います。しかしながら、両親の間に血縁関係はないわけで、2名ともMAC症の可能性があるとすると、環境要因を疑わざるを得ないわけです。 いろいろと、周りの環境についてその方に尋ねてみると、昔から水道水ではなく、井戸水を生活用水や飲料用水に使用しているとのことでした。ひょっとして?と思ったC医師はそちらの家庭の井戸水を持参するようにその方にお話ししました。その井戸水を培養検査に提出してしばらくすると、なんとBさんと同じMAC症の原因細菌が検出されたわけです。こうなると、断言はできませんが、かなりの確率で、日常的な井戸水使用が原因でMAC症に罹患したといえるのではないでしょうか。 すべての井戸水が汚染されているわけではないですし、このような例はごく少数例であると思います。水道水にはデメリットもありますが、消毒されているという点では安心であることも事実です。珍しい経験をさせていただいたので、記載させていただきました。 ***************************** ドクター畑地の診察室168.2022.11.27号 毎週日曜日お昼に配信予定です。 次号は2022.12.4.です。 お問合せ、感想などはコチラまで zm.magumagu@gmail.com 畑地 治 https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 https ://mie-matsu-kokyuki.mars.bindcloud.jp/ https://www.facebook.com/mch.respiratory.center/ 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 ***************************** ★お知らせ★ 好評発売中『ドクター畑地の診察室』バックナンバー 1ヶ月分を220円で購入できます。気になった号がある方はぜひチェックしてみてください! ◆2022年10月 https://www.mag2.com/archives/0001688238/2022/10 2022/10/30 ホーリーサクセスフルナイフ 2022/10/23 いつまで治療を続ければよいのか 2022/10/16 年に一度の検診 2022/10/09 呼吸器疾患治療 2022/10/02 抗原検査、PCR検査はすべて単一か ◆2022年09月 https://www.mag2.com/archives/0001688238/2022/09 2022/09/25 しゃっくり 2022/09/18 1年に1回

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