━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
佐々木俊尚の未来地図レポート 2022.11.28 Vol.732
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
http://www.pressa.jp/
【今週のコンテンツ】
特集
新聞の影響力は、「団塊の世代」の退場とともに終わるだろう
〜〜〜新聞はいつ消滅し、その先には何が待ち受けているのか
未来地図キュレーション
佐々木俊尚からひとこと
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■特集
新聞の影響力は、「団塊の世代」の退場とともに終わるだろう
〜〜〜新聞はいつ消滅し、その先には何が待ち受けているのか
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
新聞の衰退がいま劇的に進んでいます。なかでも多くの人が注目しているのが、朝日新聞でしょう。かつて日本のクオリティペーパーとして絶大な影響力を誇った朝日新聞は、この秋に出た日本ABC協会の数字によると、ついに399万部に。2000年ごろまでは800万部を超える部数を誇っていたのが、ついに半減してしまったのです。
しかも減少幅は加速しているように見えます。なんと前年同月比で63万部減。この減少幅がこのまま続くとすれば、単純計算で6年先には朝日新聞は消滅してしまうことになります。
どうしてこれほどの減少幅になったのかは明らかにされていません。新聞業界には「押し紙」「残紙」と呼ばれる慣行が昔からあり、これは実際に購読されている部数に上乗せして新聞販売店に届けているというものです。なぜそんなことをするかといえば、見かけ上の公称部数を増やすことができるからです。そうすれば広告効果を水増しすることができ、広告料金を高値で維持できるからという理由です。
この残紙を整理して正常化すべきであるというのはずっと以前から言われており、実際に新聞各社も残紙を減らすことに取り組んできました。今回の朝日の部数激減はその一環なのかもしれませんが、それにしても63万部減というのは尋常な数字ではありません。
とはいえ他の新聞社も、状況は同じです。
★新聞の総発行部数5.9%減 3302万7135部 2021年10月新聞協会調べ
https://www.pressnet.or.jp/news/headline/211221_14382.html
これはちょうど1年前の数字ですが、新聞の総発行部数は3300万部で、一年で206万部減っています。ピークだったのは1990年代半ばで、5300万部もあったんですよね。このころからくらべると2000万部も減っているのです。
このまま進むと、新聞は業界もろとも消滅するのでしょうか。わたしは、決してそうなるわけではないと予測しています。資産や現預金が少なく、以前から足腰が弱いと指摘されている毎日新聞や産経新聞はいずれ命脈を絶たれる可能性は小さくないでしょうが、朝日新聞や読売新聞は新聞事業だけでなく、不動産事業でも儲けています。
たとえば朝日新聞で言うと、売上高ベースでは新聞などのメディア事業がまだ1000億円以上もあり莫大です。しかし利益は少なく、あまり儲かっていません。利益額ベースでは50億円を超えることはなく、利益率では2%以下です。赤字になっている時期さえもあります。黒字にするために記者の数を減らし、人件費を削減してコストカットしているというのが現状のようです。
いっぽうで朝日の不動産事業は、コロナ禍で足踏みもあったものの、50億円前後の利益を確保しており、利益率も20%近くあります。
ちなみに全国紙はどこも一等地に本社や支社を構えており、しかもそれらは国有地を安価に払い下げしてもらった物件です。このまとめに紹介されてますので、ご興味ある方はどうぞ。
★大手新聞社の国有地格安購入案件
https://togetter.com/li/1209382
新聞各社はこれらの土地を有効活用し、貸しビル業で利益を出してきたという背景があるのです。以前から「不動産屋が新聞を出している」などと揶揄されてきましたが、これが揶揄ではなく、現実になろうとしているのが2020年代の新聞業界となるでしょう。ちなみに毎日新聞は貸しビル業さえ維持できなくなりつつあり、昨年「虎の子」と呼ばれていた梅田駅前の大阪本社を売却してしまっています。当面の資金はこれでしのげるとしても、その先はどうなるのか。東京本社のある名建築パレスサイドビルを手放す日も遠くないのではないかと噂されています。
この記事は約
NaN 分で読めます(
NaN 文字 / 画像
NaN
枚)