【一念発起】
「おー、ちょっと電車で移動するだけでこんな安い店があるんだ」
そこは渋谷から電車で2つか3つ駅で降りた駅前で、大学が近くにあるので学生向けの安い居酒屋だった。
稼ぎが少ないみつおにとってありがたい店である。
学生向けなので通常の居酒屋より安いが、料理は通常と変わらないくらい美味しかった。
「はい、お疲れ様ー」
生ジョッキで乾杯した。
同級生の友達がいいところがあるから飲みに行こうと誘ってくれたのである。
最近は贅沢できない生活だったが、たまにはいいかと久しぶりに飲みにきて二人でサッカー部時代の話をして盛り上がっていた。
しかし、2、3杯ビールを飲んだ友達はだんだんと酔っ払ってきた。
「ところで、みつお、最近どうなのか?」
「えっ?何が?」
「何がじゃないよ、お前が一緒にビジネスやろうって言ったんだろ、ビジネス頑張っているのか?」
「最近、イマイチなんだよね、生活のこともあるし、とりあえずアルバイトで何とか首を繋いでいるよ」
「分かるよ、だから話してるんだよ、バイトバイトで、全然ビジネスの実績を上げていないじゃないのか?お前は何のために東京に出てきたんか?」
「だっからよね、何とかしないといけないとは思うんだけど、最近しっくりこないんだよね」
「だっからよじゃないよ、お前いい加減にしろよ、人を誘っておきながら全然やる気がないんじゃないか?」
「えっ、急にどうしたの?怒ってるの?」
「当たり前だよ、お前のいい加減さにうんざりしてるんだよ、もう沖縄に帰った方がいいんじゃないのか?お前には向かないよ」
酔った勢いで怒っているのかと思っていたが、どうやら逆で、怒っているから飲みに誘ったとのことだった。
普段は優しいので、酒の力を借りないとマジ怒ることができないのである。
ようやく、自分へのクレームだと気がついたみつおは、真面目に話を聞くことにした。
「そうだよな、ごめん、俺が誘っておきながら、俺がビジネスから逃げていたんだな、本当ごめん、真剣にやるよ」
「お前の言葉は信用できん、真剣にやるって言いながらまたバイトに行ったらバイトに夢中になってビジネスのこと忘れるんだろ、何でか?」
彼の怒りは治らなかった。
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