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津田大介の「メディアの現場」
2022.11.25(vol.511/part1)
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──Don't lose your temper──
みなさん、こんにちは。津田大介です。
すでにご存知かと思いますが、社会学者の宮台真司さんが大学構内で何者かに襲わ
れ顔や首などを切りつけられる事件が起こりました。命に別状はなかったそうで最
悪の事態は避けられひとまずはホッとしていますが、いろいろなことを考えました。
ただ、これを書いている時点でまだ犯人は捕まっておらず、犯行に至った動機など
もわかりません。宮台さんの言論活動に対するテロであるかすらもわからないので、
まずは慎重に推移を見守りたいと思います。
そのうえで自分の話をすると、どうしても2019年のあいちトリエンナーレ2019の経
験を連想せざるを得ませんでした。「表現の不自由展・その後」という企画をやる
段階である程度の抗議や脅迫が来ることは想定しており、何かあってもある程度自
分の身を守れるよう、75日間の会期中はずっと防刃チョッキを洋服の下に着ていま
した。幸い会期中に危険な目に遭うことはなかったのですが、それでも名古屋の街
中でたまたま入ったお店で居合わせた客から「あれ? テレビで話題の……」と声を
かけられたときには緊張が走りましたね。決して好意的な感じではなかったので。
日本社会が衰退期に入り、多くの人に余裕がなくなってきていることと暴力の蠢動
は深いところで連動しているようにも思います。そしてそこに憎悪とクラスタ化を
煽るツイッターや、一部メディアが重なり、暴力へのハードルが低くなった。あま
り当たってほしくない予想ですが、動機はさまざまでしょうが、今後同様の事案は
増えていくようにも思います。コロナ前は当たり前だったぎゅうぎゅうの会場でトー
クイベントみたいな状況は、襲おうとする側にとってはうってつけで、主催者側が
どこまで本気でリスク管理するのかということも問われていくのではないでしょう
か。
でも、言論活動がオンライン中心になると、それはそれでまたフィルターバブルを
加速させる側面も出てくる。2020年代の「論壇」を「暴力との距離」ということで
どう位置づけていくのか残りの8年で考えなければいけないし、現役世代の言論人に
問われていることなんだろうなと。
来年以降、もう少し自分の活動でも「暴力」や「戦争」と本気で向き合っていかな
きゃいけないなと思っています。
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《目次》
1.メディア/イベントプレイバック
──なぜソフトバンクグループは巨額赤字に陥ったのか
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