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【Vol.459】冷泉彰彦のプリンストン通信『方向性の見えないアメリカ』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「日本の薬不足、アメリカのミルク騒動に学べ」  2022年の前半、アメリカでは赤ちゃん用のミルク(ベビーミルク)が深 刻な供給不足になり、社会問題化しました。最悪だったのは2022年5月 で、全米のドラッグストア等での「ベビーミルク欠品率」は70%に及んだと 報じられています。TVでは、連日のようにミルクを求めて必死になる親たち の姿を報じていました。  アメリカは日本と比較しますと、少子化が進んでいるわけではありません。 また、コロナ禍を理由にして出生率が極端に下がるというような現象もありま せん。にもかかわらずベビーミルクの供給が滞ったのは複合的な理由があると されています。  まず、コロナ禍のために2021年後半から物流の混乱が生じました。特 に、アメリカでは、濃縮タイプや、ストレートタイプのベビーミルクが多いで すし、例えば粉末の場合でも製品の重量は大きい商品になります。どちらかと 言えば、重さの割には単価の低い商品カテゴリとなり、そうなると物流の混乱 期には輸送の優先順位として不利になるわけです。  またトランプが「NAFTA(北米自由貿易)」の枠組みを「ぶっ壊した」 わけですが、その影響でカナダからのベビーミルクの輸入ができなくなってい たという問題もありました。  ですが、直接のトリガーとなっているのは、大手製造メーカーであるアボッ ト社の向上が、安全基準を満たしていないとしてその工場に対して業務停止処 分がされたことでした。これにより、業界では極端な品不足となり、消費者の 間ではパニックが広がったのでした。中には、臨時に母乳の冷凍サプライチェ ーンを作る動きさえありました。  この騒動により、バイデン政権は叩かれ続けて、かなりの支持を失ったので した。最終的にはバイデン政権は、防衛予備予算を使って「緊急輸入と緊急製 造」を命令して事態を収拾しています。  この問題に似たような状況が、現在の日本で進行しています。  日本の場合は、ミルクではありません。薬の不足が深刻になっているので す。  具体的には、後発で廉価な「ジェネリック」薬品、特に錠剤ではなく粉薬の 供給が滞っています。(続く)

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  • 冷泉彰彦のプリンストン通信
  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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