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日産サクラと三菱ekクロス2022年日本カーオブザイヤー受賞~だがこの流れは本当に世界のEV化について行けるのか

今市的視点 IMAICHI POV
  • 2022/12/11
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*******************************************************       今市的視点 IMAICHI POINT OF VIEW     金融、経済、政治、企業といった領域でのニュースや     トピックスをテーマに独自の視点で鋭く切り込みます     ツイートアカウント @imaichitaro     よろしかったらフォローもお願いします。             12月11日号 ********************************************************** 日産サクラと三菱ekクロス2022年日本カーオブザイヤー受賞 ~だがこの流れは本当に世界のEV化について行けるのか 12月8日「2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤー」の 最終選考会が行われ日産自動車の「サクラ」とその兄弟車で ある三菱自動車工業「eKクロス EV」が見事にその栄冠を 手にすることになりました。量販性の高いEVが受賞する というのは単なる業界の話題性だけではなく本格的なEV 時代が本邦にも到来する大きな時代の転換期となりそうです が、世界のEV市場の動きを見ますと果たして国産EV車 は生き残れるのか、下手をすれば携帯の世界のようにガラ パゴス化して終焉を迎えるのではないかと非常に心配になる 状況です。 ■軽規格のEVは国内の普及の起爆剤だがその先が見えてこない 今回見事COYを受賞したサクラ/eKクロス EVは軽自動車 規格の二次電池式EV・いわゆるBEVと呼ばれるもので BEVとしての受賞は日産のノート以来ということになります。 サクラは軽自動車規格でありながら内燃機関の搭載では 実現できない195Nmという最大トルクを発揮し、しかも 電気モーダーを利用するため驚くほどの静粛性を発揮する ことに成功しており、税制上の車格は軽でも断然高い性能 を提供してくれる商品として仕上がっています。 また価格の安さも秀逸で、いつの間にか200万円を超える ようになった国内の軽自動車と比較しても233万3100~ 294万300円という価格設定がされていますので既存の BEVよりいきなり100万円以上安く購入でき、さらに 足もとの自治体による補助金を利用すればエントリー モデルなら実質120万円程度で購入可能ということも 大きなセールスポイントとなっていることが判ります。 12月6日に発表された国内の販売台数速報によれば 日産サクラと三菱eKクロスEVの累計販売はすで に2.1万台を超えているといいますから国内における 消費者の関心がいかに高いかも窺い知れる状況です。 ■現実的な利用ではそうとう近場のちょい乗りに限定される このサクラの航続可能距離も最大180kmとされており、 世界で最新鋭のEVが既に1000km近い航続距離を確保 する世界とは全く異質の道を歩んでいます。既存の軽自動車 ユーザーはその半数が30km以下の走行しかしていない というデータがこうした商品の誕生を下支えしたのでしょう が、このメルマガでも以前取り上げましたとおり、最大の 巡行距離というのは完全にバッテリーを使い切るまで走る ことを意味していますが、現実にはそこまでしてしまうと 丸一日以上再充電を余儀なくされることになりますから 出先の急速充電などでは全く賄えないのが現状です。 そのため長距離を走行するEVユーザーは高速道路上など で残量が半分程度まで減りますと、充電インフラが設置 されているサービスエリア等で短時間の急速充電を何度 も繰り返し内燃機関の車ならばすんなり走行できる距離 を相当余分な時間をかけておっかなびっくり利用している というのが実態です。 またスマホのリチウムイオン同様気温が氷点下近くまで 下がり過ぎるとバッテリーはワークしなくなりますし、 頻繁に急速充電を繰り返しますとバッテリー自体の温度 が上がりすぎでまともに充電できないといった問題にも 直面することになります。もちろんバッテリー性能は 日進月歩の状態で進化していますしEVの普及が進むこと で充電インフラも大きく拡大し使いやすくなるのは間違い ありませんが、国内でこれだけサクラと三菱eKクロスEV が売れているといっても海外からの引き合いはいまのところ 皆無の状態でメーカー側も海外での販売は考えていない といいます。こうした状況が10年以上前のEV勃興期 における市場拡大プロセスであったならばさもありなんと 納得するものですが、2022年にこの調子で国内だけを 見た商品を展開していて本当に産業として大丈夫なのか という危惧の念は日増しに高まる状況です。 ■所有という概念が崩壊し利用という視点で見ると意外なものに負ける可能性も 実はEV生産開発の先進国である中国では短距離を乗れる お手軽EVの開発は数年前から先行して行われていたよう でこれを利用して都市部のカーシェアビジネスも盛んに 行われることになりました。駐車スペースでは常に充電 を行い、多くのひとがシェアして安価な価格で利用でき ればこんなにいいサービスはないと考えたのでしょうが、 実はこのビジネスにはとんでもない別のサービスがその 発展に立ちはだかることになります。それがUberに 代表されるタクシーの配車サービスで中国ではこの サービス料金の安さが完全に都市部のカーシェアという サービスを凌駕する結果となりちょい乗りBEVはすでに 大量に捨てられた状態になっているといいます。 車はすでに所有から利用へとそのシーンが大幅にシフト しつつありますが、カスタマーインサイトドリブンで 考えますとBEVのカーシェアなどビジネスとして行き 残れないという現実があることに目を背けてはならない 状況です。 個人が購入利用するちょい乗りBEVというのはそこまで 凄まじい市場崩壊は起こさないのでしょうが、利用コスト 視点から見るといきなりひっくり返されるリスクは十分に あり、サプライサイドだけの発想では突然市場が消滅する という驚くべき事態に直面することも考えておく必要が ありそうです。折角COYを受賞していい気分の本邦 メーカーさんにとっては実に不愉快な話かも知れませんが EV市場は実に多くのリスクに直面していることは 忘れずにいたいところです。

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