■情緒に流されない力と地図を読み換える力
物事は正しく判断するべきだ。直感としては正しい、感覚的には間
違っていると思える、だが根拠はないからとりあえず反対意見を言
う、相手を攻める、叩く、批判するという人が増えている。
本当の頭のよさがあれば、誰かの言葉を鵜呑みにすることなく、な
んとなく雰囲気に流されるのでもなく、自分の考えに基づいて「こ
れは正しい」「これは間違っている」などの判断ができるはずだ。
それは単に論理的ということではない。いわば直感に従いながら、
論理的でもある、直感と論理の両面から正しい答えを導き出せる
ということだ。
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「本当に頭がいい人」が持っている力は4つある。すなわち「情緒
に流されない力」「地図を読み換える力」「アニマルスピリッツ」
「妄想する力」の4つの力だ。
1つ目の力「情緒に流されない力」を鍛えることは、正解のない社
会で生きていく強い力だ。情緒に流されない、つまりロジックの
力、論理的思考力だ。
論理的思考力に関わるのは脳の前頭前野だ。これは活力やコミュニ
ケーション力に関わる部位だ。鍛えるには「笑う」「叱られる」
「会話する」などの刺激が必要だ。想像するだけでも訓練になる。
論理的思考力が高い人、すなわち前頭前野が発達している人は、情
緒に流されず「自分が欲しいもの」でなく「相手が望むこと」を見
抜き、相手の望みに沿って振る舞える。主語を相手に置けるのだ。
この能力は、日々の習慣で身につけるしかない。「私がしたいこと
は」と考えている自分に気づいたら「いやいや相手が望むことはな
んだろう」と機械的に、主語を「私」から「相手」に切り替える。
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2つ目の力は「地図を読み換える力」だ。ここで必要になるツール
が「コンパス」だ。「地図よりコンパスが大事」なのだ。これは
「仮説力」と言い換えることができる。
不確実な現代社会を生き抜くには仮説の精度が問われる。緻密な仮
説を立てれば、それが荒海をゆくコンパスになる。結果として地図
を書き換えることもできる。
精度の高いコンパス、すなわち緻密な仮説を立て、地図を書き換え
るには情報が必要だ。ただ、それだけでは仮説は立てられない。情
報を組み立てて仮説を立てるには、抽象化する能力が必要だ。
何かを分析することになり、データを集めたものの「分析」を間違
えたということがある。理由を掘り下げていくと、データを抽象化
する力が足りなかったという場合が多いのだ。
仮説の精度を高めるには、情報をたくさん手に入れることに加え
て、抽象化の能力を鍛えることが重要だ。そして、抽象化のトレー
ニングには、目で見て選ぶという訓練が有効だ。
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仮説を立てるには「帰納法」と「演繹法」がある。帰納法とは、た
くさんの事象から共通点を導き出す思考法だ。一方、演繹法は足し
合わせる、関連づけるなどで仮説を立てる方法だ。
帰納法と演繹法、どちらで仮説を立てるにしても、仮説の精度を高
めるには、まず情報をたくさん集めて、その中から取捨選択をする
というステップは変わらない。
情報量を増やしたり、情報を選んだりするためのトレーニングとし
て、最も手間いらずで、道具も不要で、効果が高いのは「ストーリ
ーを作ってみる」ことだ。
また、仮説を立てるには、トライ&エラーも必要だ。そして、仮説
を立てた後は、実行力と検証力が大切だ。知識をベースに現実に近
い想像を巡らせるのだ。
失敗しない範囲で実行したり、失敗しても失敗ではなかったことに
してしまう無修正主義ではだめだ。失敗こそしなくても、チャレン
ジしたり、失敗を乗り越えて前に進む気概も生まれないのだ。
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