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高野孟のTHE JOURNAL Vol.579 2022.12.12
※毎週月曜日発行
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《目次》
【1】《INSIDER No.1185》
日本は一体どういう「脅威」に直面しているのか/その
基礎の基礎を蔑ろにして防衛費を倍増することの嘘くさ
さ
【2】《CONFAB No.545》
閑中忙話(12月4日~10日)
【3】《FLASH No.492》
政府クラウドを運用するのは日本企業じゃない マイナ
カードで国民の個人情報が米国に筒抜け?/日刊ゲンダ
イ12月8日付「永田町の裏を読む」から転載
■■INSIDER No.1185 22/12/12 ■■■■■■■■■
《脅威論1》日本が直面している「脅威」とは?/その
基礎の基礎を蔑ろにして防衛費を倍増することの嘘くさ
さ
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およそ一国の防衛の戦略・政策・予算を論じるについ
て、第1ページをなす出発点は、その国が一体どういう
軍事的な「脅威」に直面しているのかという、軍人用語
で言う「脅威の見積り」である。
それは具体的には、「どこの国の、どの部隊が、どう
いう様態で侵略してくる蓋然性が高いか?」ということ
の、冷静、かつ可能な限り科学的・客観的な分析でなけ
ればならない。もちろん、その蓋然性には複数の可能性
があり、従っていくつも脅威シナリオがあり得るけれど
も、可能な限り数学的な確率計算を適用し、優先順位を
付けなければならない。
こんなことはごく当たり前のことで、或る戦士が誰か
から狙われているらしいことを察知したとして、その相
手が誰で何人なのか、柔道家もしくはキックボクサーが
素手で襲ってくるのか剣術の達人が刀を抜いてくるの
か、どういう条件の下でどのタイミングで立ち現れる公
算が大きいのか等々を大まかにでも推測し読み切ること
なくして、身を守る作戦など立てられるはずもない。
政府はことあるごとに「日本を取り巻く安全保障環境
はますます厳しさを増しており」という決まり文句を繰
り返し、そうするとマスコミも「ますます」というの
が、いつから比べて(量的に)、どのように(質的
に)、脅威が増しているのかの中身を何ら問うことな
く、その表現を鸚鵡返しに垂れ流す。それを毎日によう
に繰り返されると、一般の人々は「そうか、ますます脅
威が差し迫っているのだな」と、根拠不明の不安感を上
から上から刷り込まれていくのである。
●冷戦時代にはあった「旧ソ連の脅威」
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