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第273号:とんでもない計算間違い(中)

田中優の‘持続する志’(有料・活動支援版)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 『 田中優の未来レポート 』 第273号/2022.12.15 http://www.mag2.com/m/0001363131.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ とんでもない計算間違い(中) 前号で、とんでもない地球温暖化に関わる大間違いの話をした。それは森林の二酸化炭素の吸収量の計算が、日本で大間違いであったという話だった。これを正しいものに直さないと、温暖化防止の話自体がおかしくなるという話だった。要はこれまで計算の基礎に用いられていた「森林簿」も、広さも二酸化炭素吸収量も全然正しくなかったのだ。 こんな怪しげな話で世界が出来上がっていることに驚くが、こんな間違いも進展している科学の発展の途中では起こることだと思う。むしろ気にすべきはこの間違いに気づいた時で、素直に正直に詫びるか訂正するかを直ちにするかどうかが重要な岐路になるのだと思う。 日本の政府のように「権威主義」と「無謬性神話」に寄りかかってきた国は、その間違いを直せないだろう。今、こんなに放射性物質が拡散した地域でがんが多発している事態を迎えても、「直ちに影響は出ない」という言葉も「風評被害」というひどい言葉も、お詫びも訂正もないのだから。こんな政府は腐っていると思う。 HWP(伐採木材製品)問題 いや今回述べたいのはその話ではない。先にあと二つ、巨大な計算違いについても述べておこう。 一つは森林が木質資源として保存された場合の話だ。「HWP(伐採木材製品)の問題」と呼ばれる話だ。 この「HWP(伐採木材製品)」とは、 森林の炭素吸収能力だけでなく、森林から搬出された後の木材もまた、例えば家屋や家具のように「炭素固定」されるものもあるのだから、その分も炭素固定分として計上すべきだ という話だ。 これがどうなったのかというと、2011年の「COP17」で認められ、木材は「伐採・搬出された時点」で二酸化炭素の排出として計上するのではなく、「木材が廃棄されて焼却・埋め立てされた時点」で計上するように改善された。これを「HWP(Harvested Wood Products 伐採木材製品)」という(図1)。 図1 新HWP基準 例えば、スギが再度育つまでの50年を超えて使われる長寿命の建物に使われた木材は、明らかに炭素を貯蔵している。これがゴミとして燃やされていく木材くずと同じに扱われるのはおかしいだろう。少なくとも燃やされたり廃棄されたりするまでは炭素として貯蔵しているのだ。だから使うほど二酸化炭素の貯蔵として地球温暖化の対策になる。 https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/ondanka/20141117_topics5.html (林野庁 第二約束期間(2013~2020年)のルールはどうなっているの?-HWP(伐採木材製品)などの取り扱い) ところがこれもまた良い話で終わらない。2011年に南アフリカのダーバンで行われた「COP17」で、「森林経営」による吸収量の算入上限値は、各国とも基準年(1990年)総排出量の3.5パーセントまでとされてしまっているのだ。

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  • 環境活動家、田中優(たなかゆう)の有料・活動支援版メルマガです。地域での脱原発やリサイクルの運動を出発点に、環境、経済、平和などのさまざまなNGO活動に関わり、日本で初めてのNPOバンクを作りました。経験と知識と綿密なデータを基に、独自の視点で生み出した社会の新しい仕組みづくりのヒントや国内外を取材したお話をご紹介します。頂いた購読料の一部を、次の社会を作るための活動資金にさせて頂きます。 ★まぐまぐ大賞2017 専門情報部門にて【第1位】 ★まぐまぐ大賞2018 専門情報部門にて【第2位】 ★まぐまぐ大賞2019 専門情報部門にて【第3位】 を頂きました!
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