法律が通ったり、予算が確定したりしてからじゃないと政策の方向性を知ることはできないと思っている方もいるでしょうが、実はそんなことはありません。
政策は役所の中の会議での議論を経て、案が取りまとめられます。官僚が考えた素案を有識者や関係者(ステークホルダー)の意見も踏まえて、より妥当で精緻な政府方針に仕上げていきます。つまり、政府の会議を追うことでまずは政策の方向性を先取りすることができます。
加えて会議に登場するステークホルダーのスタンスを理解することで政策提案の成功確率を上げることもできます。どんな政策もたいていは彼らのチェックを通って実現に至ります。ステークホルダーとなる団体のバックグラウンドや思想を理解できれば、彼らと連携して政策の議論に参加できるかもしれませんし、致命的に反対されないような質の高い政策提案を行うこともできます。
今回は医療、医薬品政策の事例をもとに審議会の流れや、会議によく登場するステークホルダーのスタンスを確認していきます。
1)制度改正の流れその1‐議論の主戦場は審議会下部の検討会‐
最近の医政局の制度改正である2021年の医療法改正(以下医療法改正)のプロセスを振り返ります。
特徴は、医療部会の下の検討会で詳細な議論が行われる点です。
医療法改正では、医師の働き方改革と医療従事者間のタスクシェアリング、医療提供体制の確保が主なテーマとして挙げられていましたが、それぞれのテーマについては検討会で議論が進められていました。
下部組織として検討会が設置される場合には、検討会で議論が収束しているため、上位の審議会や部会は議論の内容を報告し、追認を得る場になります。
議論の主戦場は検討会になり、そこの議論が重要になるのです。政策づくりに参加したい場合は、検討会の議論に食い込めるようなどりょくが必要になります。
なお、単に政策の方向性を追えるだけでよいという場合には、検討会の報告書が重要です。翌年の1月の通常国会で法改正をする場合は年末に報告書が出されます。法改正がある場合には、予算ももれなくついてきます。法改正に連動させて新しい予算を実現したい場合には、報告書を読みながら提案内容を練ることができます。
(執筆:西川貴清 監修:千正康裕)
講演、コンサルティング、研修のご依頼などはこちらまでお願いいたします。
2)制度改正の流れその2-初回のテーマ設定とスケジュール提示-
第一回目の会議資料ではたいてい、その会議で議論する内容がしめされます。
「医師の働き方改革の推進に関する検討会」の第一回資料の例では、「検討を要する論点」として、2024年から開始される勤務医の時間外・休日労働の上限規制の例外(より高い勤務時間を許容する)となる要件や認定などの詳細などを挙げていました。その会議で何を決めるのかを、対外的に示した第一回の資料を見れば、検討会の大まかなトピックを把握できるのです。
スケジュールについても第一回の会議でしめされることが多いです。医薬品医療機器制度部会の資料がその一例です。ステークホルダー間の対立が深刻でなく、決められたスケジュールどおり、意見がまとまることが予想できる場合、スケジュールが示されます。
検討会の初回の資料から議論される論点やスケジュールを押さえることで、政策を先取りし、必要があれば政策議論に参加する方法を考えるのが基本です。
この記事は約
NaN 分で読めます(
NaN 文字 / 画像
NaN
枚)