■人を「階層」で捉える
成功を目論むなら、アイデアよりも、ファイナンスよりもはるかに
大事なことがある。それが「誰とやるか」だ。人と会う時、相手を
見抜こうとする時、ポイントがあるのだ。
まず、ある程度の「型」を体に入れておくことが近道だ。人を見る
にあたっては、人間を建築物のように、階層として捉えてみるべき
だ。イメージは、地下深くに作られた建物だ。
1階が「経験・知識・スキル」地下1階が「コンピテンシー」、地
下2階が「ポテンシャル」、そしてもっとも最下層の地下3階が
「ソース・オブ・エナジー」だ。逆ピラミッド型の超深層ビルだ。
浅いほう、つまり地上に出ているものほど、他人からも見えやす
く、わかりやすく、そして変わりやすい。一方、地下に潜れば潜る
ほど見えにくく、わかりにくく、変わりにくい。
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地上1階にあるものは、見えやすく、わかりやすく、変わりやすい
ものが格納されている。たとえば「経験」「知識」「スキル」だ。
これらは表面的で、履歴書からでも簡単に読み解くことができる。
残念ながら、ほとんどの面接は、この階層を触るだけで終わってし
まっている。建物の1階だけを見て、全体を見た気になってしまっ
ているのだ。
たとえば履歴書に「大ヒットしたビールの販売戦略を立てた」とあ
るとする。もしかしたら、上から落ちてきた販売戦略を実行しただ
けかもしれないし「ただ、そこにいた」だけかもしれない。
「経験がある」だけの人を拡大解釈して、鳴り物入りで入社させ、
マーケティング幹部に据えたものの、全く成果が上がらないのは当
然だ。こうした採用ミスが、中途採用のあちこちで起きている。
原因は、その気になれば捏造すらできるような薄っぺらな情報だけ
で、大事な人選びの決断を進めてしまっているからだ。そのために
は、相手の地下に踏み込んでいかなければならないのだ。
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地下1階は「コンピテンシー」だ。コンピテンシーとは、その人が
「どんなシチュエーションで、どういうアクションを取りがちか」
という、固有の行動のパターンだ。
相手のコンピテンシーがわかれば、相手の「将来の行動を予測」で
きる。人間は似たようなシチュエーションで同じ行動を繰り返しが
ちだ。そんな研究結果が下敷きにある。
ビジネスの現場で人を見極めるには、5~7個のコンピテンシーを
取り扱う。「変革志向」「成果志向」「戦略志向」はマネージャー
クラス以上のビジネスリーダーを選ぶ場合によく使われる。
その他「他人と協調できるか」どうかや、「人を育成する能力があ
るか」なども重要だ。このように、コンピテンシーといっても、
様々なものがあるのだ。
★
コンピテンシーを見抜く必須技術は、エピソード・ベースのインタ
ビューだ。相手の意見でなく、取った行動すなわちファクトに目を
向けるのだ。
たとば、入社志望者が前職の自部門で問題が発生し、お客様と関係
がこじれてしまった経験があったとする。その場合、どのように問
題を解決したのか、リアルなエピソードを聞いていくのだ。
「仲間と協働して問題を解決しました」ということなら、「協働」
「チーム」関係で深掘りすればいい。「計画を見直して根本的に再
発を防ぎました」なら「戦略」「変革」などを評価していく。
これは、プライベートの場、婚活でも活用できるはずだ。相手に
「自慢話を聞かせてください」「苦労話もぜひ教えてください」と
質問してみるのだ。
その際、相手の「意見」だけでなく、具体的に「その時、何をした
の」と、相手の「行動」を深掘りしていく。そうするれば、有益な
情報、コンピテンシーが見えてくるはずだ。
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