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【Vol.461】冷泉彰彦のプリンストン通信『ジョーカーと化したトランプ、共和党のババ抜き』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「ミスしたら自腹、地方自治体に希望はあるのか?」  茨城県常陸太田市の下水道事業で、設計ミスに伴い「マンホールから汚水が あふれる」状態の修繕費用として生じた費用計約4億円の一部を穴埋めするた め、全職員の給与を減額する改正条例案が15日、市議会で可決されました。  当初の報道では、自腹で裏金的に拠出するかと思ったのですが、条例として 公的に進めるというので二重にビックリしました。約15ヶ月間にわたって市 長など特別職は5%、一般職員は1~2%、給与を減額するのだそうです。  この問題に関しては、私の基本的な考え方は、 「ミスを自腹で穴埋めする発想は公私混同であり、結果的に裏返しの公金横領 の土壌を生むので反対」 「ミスの経緯を精査して、張本人とチェック漏れを起こした上司、関連部署の み処分」 「コンサルなどに設計を外注したのなら、その外注先に損害賠償請求」 「施工主に責任があるのなら、修繕費用を値引きさせる」  などを組み合わせるのが良いと思いますが、どうも全体像には利権の匂いが 消えない感じがします。  それはともかく、今回の事件で怖いと思ったのは、人材不足という件です。 地方自治体の財政は厳しくなっています。今回は、新規造成の場合で下水工事 をした分は、下水道料金が入ってくるので「まだいい」ケースですが、そうで なくて老朽インフラを更新というような場合は、更新してもその分だけ料金が 入るわけではありません。  例えば老朽化した橋、トンネル内壁などは、施工しないと危険です。その費 用の捻出すら大変なのに、設計のチェックをする市町村の職員がノウハウを持 っていないとか、計算ミスばかりということになったり、そこまで悪質でなく ても、業者の言いなりで高い費用を吹っかけられるということはありそうで す。  つまり、限りある予算の中で、限りある人材の枠内で、ミスのない行政を行 うということでは、マネジメントがダメでは結局のところは仕事が回らなくな るということです。だからこその大合併などをやっているのですが、それでも 難しい部分はかなりあると思います。  総務省とかは問題の把握ができているのか、また地方の議会というのはこう した問題へのチェックができる仕掛けになっているのか、全国的な総点検が必 要ではないでしょうか。  もっと言えば、下水道設備の設計などという職種は、しっかりジョブ型雇用 にして、官民での人材交流も行い、専門性のある人材は町村の枠を超えて広域 的な責任範囲を持たせる代わりに高額な年俸制にするとか、柔軟な組織にして 行く必要も感じます。  更に言えば、そうしたミスが頻繁に起きるようになって、しかもコストは自 腹というようなことでは、公務員も教員同様にブラック業種として、人手不足 の中で人材確保が難しくなるかもしれません。この問題、ミスを自腹で払え ば、それで世論が納得するなどという単純な話ではないと思います。

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  • 冷泉彰彦のプリンストン通信
  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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