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モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年1月8日(日)号

ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 【リライト】映画版「鬼滅の刃」歴代興行収入1位の影で危惧される日本映画界の未来 ~2~ 東宝一強体制の理由 しかし国際市場では通用せず -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 目次 ・東宝一強体制の理由 ・邦画大手3社(東宝、東映、松竹)で全体の興行収入の85%のシェアを奪い合う ・東宝製作映画は、果たして本当に世界に通用するものなのか? ・世界市場で通用しない東宝映画 今後は世界展開に力を入れるも、先行きは不透明 ・東宝一強体制の理由    日本公開の映画のうち邦画作品のなかで、歴代興行収入トップ50位のうち、ほぼすべてを東宝作品が占めている。なぜ、このようなことが起こってしまったのか。  時代は少し遡るが、2016年のカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門審査賞を受賞している深田晃司監督は、この年の「キネマ旬報」10月下旬において興味深い発言をしている。  「日本映画の興行収入はだいたい年間一千億円程度を推移している。そのおよそ八割が東宝・東映・松竹といった大手三社に占められている現状がある。特に東宝のシェアは圧倒的で、今も「シン・ゴジラ」(16)や「君の名は。」(16)が大ヒット中であるが、ここ数年の日本映画の興行収益ランキングを見ると、毎年目を疑うほどの割合で東宝が埋め尽くしている。    例えば二〇一五年の邦画の興行収益のランキングを見ると、一位から五位までがすべて東宝で、その後六位に東映、八位に松竹がかろうじて入るが、それ以外二十位まですべて東宝作品である」    「この状況は客観的にみても異常ではないか。もちろんそこに東宝の企業努力、作品の力がまったく無関係であるとは言わないが、しかしこの圧倒的なシェアを生み出すのに、東宝が誇る「国内最強の興行網」たるTOHOシネマズを擁する構造的優位は当然無関係ではない。」 ・邦画大手3社(東宝、東映、松竹)で全体の興行収入の85%のシェアを奪い合う    日本における映画業界の売り上高とそれを占めるシェア(2019年~2020年)の数字を見てみると、1位の東宝の売上高は2,627億円で、そのシェアは32.9%程度であり、ただ単純にこの数字だけを見ると「東宝1強体制」とはあまり見えてこない。  しかし、興行収入だけで注目してみると、すでに2015年の段階で、いわゆるハリウッドメジャー(ディズニー、20世紀FOX、パラマウント、NBCユニバーサル、ワーナー・ブラザーズ)と邦画大手3社(東宝、東映、松竹)が占める割合は全体の興行収入(2171億1900万円)の85%に達しており、この9社以外の映画会社で残りの15%のシェアを奪い合っている状況であった。  さらに問題なのは、これら9社が実際に公開した映画の本数は、日本全国で1年間に公開された1136作品のうちの153作品(全体の13.5%)程度であり、いわゆる低予算で作られたインディペンデント映画は983作品が作られたものの、それを残りの15%のシェアを奪い合う状況となっている。  実際には、ほぼ名の知れない映画が多く公開されているものの、少数の東宝やハリウッドメジャー作品が人々の注目を集めて映画業界を「支配」しているのだ。 ・東宝製作映画は、果たして本当に世界に通用するものなのか?    2020年の米国アカデミー賞では、「パラサイト 半地下の家族」が作品賞を受賞した。非英語作品の受賞は、史上初めてのことである。  アカデミー賞といえば、トム・クルーズ主演「ラスト サムライ」(2003年)で、助演男優賞部門にノミネートされた渡辺謙が思い出させるが、この作品自体は作品賞にノミネートされなかった。  そもそも、東宝製作の日本映画は、世界で評価されてきたのだろうか。たとえば、2000年以降のアカデミー賞ノミネート作品をみてみると、 ・2019年 外国語映画賞ノミネート「万引き家族」 ・2017年 長編アニメ賞ノミネート「レッドタードル ある島の物語」 ・2016年 長編アニメ賞ノミネート「未来のミライ」 ・2015年 長編アニメ賞ノミネート「かぐや姫の物語」 ・2014年 宮崎駿監督作長編アニメ賞ノミネート「風立ちぬ」 ・2009年 外国語映画賞受賞「おくりびと」                ・2006年 宮崎駿監督作長編アニメ賞ノミネート「ハウルの動く城」     ・2004年 山田洋次監督作外国語映画賞ノミネート「たそがれ清兵衛」     ・2003年 宮崎駿監督作長編アニメ賞受賞「千と千尋の神隠し」           

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  • 日々流れるニュースを、様々な視点から分かりやすく解説するニュースサイト「ジャーナリスト 伊東 森の新しい社会をデザインする The Middle News Journal」のニュースレター有料版です。 いまだ私たちに伝えられてこないマスコミの情報は、残念ながら存在します。 「そもそも?」「Why?」を大事に、マスコミの情報を再編集し、様々な視点や確度から執筆していきます。 その「水先案内人」として、私の仕事が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
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