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「さん付け」呼称の変化から見る日本社会の移り変わりとは 佐々木俊尚の未来地図レポート Vol.737

佐々木俊尚の未来地図レポート
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 佐々木俊尚の未来地図レポート     2023.1.9 Vol.737 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ http://www.pressa.jp/ 【今週のコンテンツ】 特集 「さん付け」呼称の変化から見る日本社会の移り変わりとは 〜〜〜昭和の「上下関係」型から令和の「円環」型へ 未来地図キュレーション 佐々木俊尚からひとこと ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■特集 「さん付け」呼称の変化から見る日本社会の移り変わりとは 〜〜〜昭和の「上下関係」型から令和の「円環」型へ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ あけましておめでとうございます。2023年の幕開けとなりました。今年もよろしくお願いいたします。 さて昨年末のサッカー・ワールドカップ解説で、本田圭佑さんが現役選手を「さん」付けで呼んでいたことが話題になりました。「体育会系」という言葉もあるように、スポーツといえば上下関係に厳しい世界というイメージが昔からあったのですが、もうそういう時代ではないことを本田さんの姿勢は如実に示しています。 これはスポーツの世界のみならず、日本社会全体に広がっている姿勢なのでしょう。 ★ 本田圭佑の「さん」付け好評に映る「敬語」の大変化 https://toyokeizai.net/articles/-/640939 フリーアナウンサーの宮本ゆみ子さんが書かれたこの記事が、実に正鵠を射た分析をしていました。本田さんは若い選手を「さん」付けした一方で、一部の選手についてはニックネームで呼んでいたことについて。 「年令に関係なく、親交のある選手に対しては『さん』づけでなく愛称で呼ぶ。本田さんと各選手の距離感が伺い知れるようで、サッカーの内容とは別にとても興味深いものがありました」 「主従関係を明確にできる敬語は、戦前までは重宝されていました。しかし、今はその当時のような明確な上下関係を強く意識させる必要はありません。身分に上下なく、誰もが平等に認められることが基本です」 「そんな時代にふさわしい敬語の考え方は、『上下関係』ではなく『自分と相手との距離感に応じて考える』ことです。まさに、本田さんが解説で『さん』をつける選手とつけない選手を自然に分けていたのと同じように」 本当におっしゃる通りだと思います。この「上下関係」から「距離感」へというのは、非常に面白い指摘です。 古い日本では、さまざまな場面に「上下関係」がはめ込まれていました。たとえば名刺交換。SNSや電子メールのなかったころは、相手の連絡先や正確な氏名、肩書きなどを確認するために必要なツールだったのですが、そのようなアイデンティティ確認以外にも、昭和時代に葉実は別の目的があったという話があります。 それは名刺を交換する相手との上下を確認する手段だったということ。 相手の勤め先の会社は東証一部上場か二部上場か、それ以下か。財閥系かそうでないか。一般への知名度はどうか。そのあたりの基準で、自分の会社と相手の会社の「格の違い」を、名刺をちらりと見た一瞬で判断するのです。さらに、役員か部長か課長か係長かという社内での肩書き。この肩書き要素を、会社の格の評価に加えて、相手が自分より上か下かをとっさに判断し、それによって相手への態度を決めるのです。 ようするに名刺交換が、マウンティング合戦の土俵になっていたということです。

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