メルマガ読むならアプリが便利
アプリで開く

【Vol.366】「インフルエンサーとやらになる前に」

NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明
2023/1/17 Vol.366 1. インフルエンサーとやらになる前に 先週、アメリカには日本にみるテレビの年末年始特番みたいなものがほとんどない、と書きました。年の変わるその瞬間まで、中には30分のシットコム(シチュエーション・コメディ。かる〜い乗りのドラマ)の、しかも再放送を流したりしています、と。年またぎの地上波で、数年前のドラマ、しかも30分の、しかも暇つぶしで見るようなクオリティーの「フレンズ」とかを平気でやってます。 それは、つまり、日米におけるテレビ文化自体が違うのかもしれません。テレビの立ち位置が違う(今となっては、日本の若い世代も、年またぎにテレビなんて見てないのかもしれないけれど)。 なぜ、こんな違いが出てくるのか。やっぱり日本の方が圧倒的によくも悪くも異質、なのかもしれません。世界は多種多様な人種と文化が絶妙なバランスで成立しています。あるいは、成立できていない。どちらにしろ、あらゆるバックボーンとあらゆる生活様式が混在するので、全員に趣向を合わせられない。全員の希望を聞いていられない。なので、最大公約数的な、最低限のカルチャーに集約されます。 対して、日本は単一民族、単一宗教、単一言語の国のなせる技ですが、好みはある程度、一定方向に予想できる。やっぱり「Mー1グランプリ」、日本国民の多く、誰が見てもおもしろいよね。そうじゃない人より、そうな人が多いから視聴率も高くなる。そして「Mー1グランプリ」で披露されるお笑いの、ボケとツッコミがやりとりする会話に内在されているものは「あるある」です。国民全員が共感できるものです。その下地を僕たちはすでに持っています。今年のチャンピオンのウエストランドの受賞漫才を見ましたが、やっぱり国民の多くが口では言わなかったけれど、心のどこかで思っていたことを揶揄する形で漫才は進行していきました。「やっぱりユーチューバー、どこかでウザい」とか(笑) アメリカの場合、国民の大半が思っていること、、、がない。バラバラだからです。もちろんコメディのシーンだけでなく、政治の世界でも「アメリカ国民の大半が思っていること」は当然、あるにはあります。でも、多種多様な人種とバックボーンの国民の大半が思っていること、はやっぱり当たり前すぎること、うすーいこと、第1表層になります。もうちょい奥まで掘ると、やっぱりバラバラです。第2層、第3層まで掘るとまったく違う価値観が出てきます。 Mー1の絶妙な細かな笑いまで国民全体で笑い合えるのは、第3層、第4層あたりまで共通の価値観と心理だからなのだと思います。第1層に標準を合わせないといけないアメリカのコメディアンは、日本人から見ると、やっぱりベタでおもしろくないかもしれません。うっす〜いベタなアメリカンジョークを言ってるイメージがあるのはそのためだと思います。 移民でできた国は、それぞれの新年の迎え方があるので「年末年始は特番見なきゃ!」と思う人たちのパーセンテージが日本よりも低い。なので特番も作られない。もちろんそれぞれの国の文化の違い、という言葉で片付けられることかもしれません。 でも、分母が多種多様に広がるほど、全部のリクエストに答えられない分、サービスもプロダクトも画一的になるのは間違いないと思います。 日本に出張に行くたび、コンビニの「新商品」が定番を除いてほぼ入れ替わっているのもそのためです。 アメリカで20年以上暮らしていますが、デリの商品はおもしろいほど入れ替えがありません。一緒です。飲み物は、コーラとスプライトと ドクターペッパーのそれぞれレギュラー、ライト、ライムがあるだけ。 以前、アメリカ人の友人に聞いたことがあります。「なぁ、どこの映画館行っても、ぜんぶ、おんなじ、一種類の味のポップコーンしかないのは、なんで?」と。 もし僕が、映画館のオーナーであったとしたなら。どうテキトーに生きたとして、朝起きて、仕事して、遊んで、、、、でも絶対、考えると思うんです。考えてしまうと思うんです。「 試しに、違うフレーバーのポップコーン売ってみよかなぁ 」って。仮にビジネスに熱心じゃないとして、仮にめんどくさがり屋として、それでも何年もやっていると、「同じプロダクトの違うラインも売り出してみようかな」と思わずにはいられない。 でも、頑なに、この国の映画館は何十年も同じ味の、しかも一種類しか売ってません。どこの映画館に行ったとして。

この続きを見るには

この記事は約 NaN 分で読めます( NaN 文字 / 画像 NaN 枚)
これはバックナンバーです
  • シェアする
まぐまぐリーダーアプリ ダウンロードはこちら
  • NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明
  • 全米発刊の邦字新聞「WEEKLY Biz」の発行人、高橋克明です。新聞紙面上や、「アメリカ部門」「マスコミ部門」でランキング1位になったブログでは伝えきれないニューヨークの最新事情、ハリウッドスターとのインタビューの裏側など、“ イマ”のアメリカをお伝えします。
  • 586円 / 月(税込)
  • 不定期