【白旗】
高速道路の穴掘りは来る日も来る日も続いた。
ひたすらと道路脇の穴を掘り続けるという、何の変化もなく、ただ毎日同じ作業の繰り返しだった。
誰も喋る元気もなく黙々と掘り続けていたのだが、唯一元気な作業員がいた。
彼は中国からの留学生だったが、このアルバイトが気に入って本国へ帰らずに日本で働いているとのことだった。
「何で中国に帰らない?」
「チュウコクよりもニッポンたのしいよ」
彼は確かに仕事も楽しそうだった。
通常の日本人なら、こんな単調でキツイ仕事は嫌がるのだが、その中国人は楽しそうに仕事をしていた。
「はいっ、はいっ、はいっ、はいっ」
いちいち掛け声を上げながら掘り続けている。
飽き飽きしていたみつおは、その中国人と一緒になって、
「はいよっ、はいよっ、はいよっ、はいよっ」
訳のわからない掛け声で、二人で競争しながら掘り続けていると、不思議と疲れないのだった。無駄な労力のようでいて、実は掛け声を上げながら精一杯に穴掘りをしている方が楽なのである。
中国人と二人で笑いながら、あっという間に昼休みになった。
弁当を買ってきて食べながらおしゃべりをする。
「日本の何が楽しいの?」
質問すると
「ニッポン、何でもオッケーね、チュウコクではできないことも、ニッポンではできるよ」
「何が?」
するとその中国人はニヤニヤしながら
「キンジョーさん、オンナスキか?」
と逆質問されたので
「そりゃ、好きにきまってるだろ」
「ニッポンはオンナといいことできる所がイッパイ、チュウコクにはないよ」
その中国人は風俗にハマっていたのである。
それが最高だから、キツイ仕事も楽しいのである。穴掘りもそこへ行くまでのプロセスなのだ。
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