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週刊life-is-beautiful-2023年1月17日号:デジタル・トランスフォーメーション

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん Tesla Roof (2) 設置は完了したものの、期待通りの発電量が得られない Tesla Rootですが、ようやく理由が判明しました。太陽光パネルとの接続に問題があるため、5つのインバーターのうち2つががエラーを起こして、シャットダウンしていたのです。(期待した通りの出力が得られない)システムAの3つのインバーターの中で、2つのインバーターで昼間でも(直流・交流変換で生じる熱を逃すための)ファンが回っていないという症状が観察されていたので、怪しいとは思っていましたが、やはりその二つに問題がありました。 インストーラーのエンジニアが来て色々と試した結果(Teslaのサポートラインと5時間ぐらい電話で話していました)、片方のインバーター(最大出力 7.6kW)の問題を解決することが出来ましたが、もう一つのインバーター(最大出力3.6kW)に関しては、まだ解決していません。彼に言わせると、屋根側の配線に何らかの間違いがあるらしく、そちらに詳しい人に別の島(Kauwai島)から来てもらって解決する必要があるそうです。 なので、この記事を書いている時点では 42.8kW のパネルのうち、39.6kW(92.5%)だけがインバーターと接続されている状態で稼働しています。11日(水曜日)は1日中晴れていましたが、その日の出力は132kWhでしたが、100%が稼働した場合の期待値が150kWh(年間平均)なので、その92.5%の138kWhと比べて悪くない数字が出るようになったと言えます。 ちなみに、インストーラーの作業を見ていましたが、インバーターの状況を把握するには、インバーターをリセットした上で15分以内にそのWiFiに直接繋がなければならないように設計されており、とても不便です。せっかく我が家のWiFiに繋がっているのだから、そこから直接アクセスできるべきだし、リセットしてから15分間しかアクセスできないという仕様は、インストーラーにとってもオーナーにとっても不便すぎます。 私がソフトウェアの開発担当者であれば、消費者向けのテスラアプリから各インバーターの状況を直接モニター出来るように実装します。インバーター側には、太陽光パネルと繋がっているそれぞれの端子から得られている電圧・電流のデータがあるので、それをアプリから監視出来るようにします。そうしておけば、設置時だけでなく、通常の運営時にもパネルや配線の問題を早期発見出来るのでとても良いと思います。 現時点のアプリからは、インバーターを複数束ねたのゲートウェイの出力のみをモニター出来ますが、それぞれのインバーターの出力や、太陽光パネルからの入力がモニター出来ないので、どこかに異常が生じても、どこが悪いのかがすぐには分からないのです。 読んでもらえるか分かりませんが、Elon Musk向けにTwitterで呟いてみました。 @elonmusk I’ve got 42.8kw Tesla Roof on my house and am quite happy. I have one suggestion. Please make the status of each inverter (and input of each string) accessible from Tesla App. This data is quite important to monitor the health of the whole system @TeslaSolarglass デジタル・トランスフォーメーション 先日、たまたま経産省が行っている「DX認定制度」のことを目にしたのですが、何かが根本的に間違っているように感じたので、その違和感について書きます。 デジタル・トランスフォーメーション(DX)とは、デジタル技術により社会やビジネスが大きな変革を起こすことを指します。単なる「既存のビジネスのデジタル技術を使った効率化(デジタル化)」と違って、ビジネスのやり方やビジネスモデルそのものが根本的に変わり、その業界で活躍する企業が大幅に入れ替わるのが特徴です。 良い例が、書籍の販売ビジネスです。従来は、書店を構え、そこに来た顧客に対して書籍を販売するのが一般的なビジネスでした。品揃えは少ないけれども、駅前などの立地条件で勝負する小規模店舗と、豊富な品揃えを持つ大規模店舗が存在し、日本では紀伊國屋書店、米国では、Borders や Barnes & Noble が大規模店舗を複数持ち、大きなビジネスをしていました。 その書籍販売ビジネスにDXを起こしたのが、Amazonです。Amazonは、実店舗を持たず、オンラインで書籍を販売するというビジネスモデルにより、「どんな大規模店舗よりも品揃えが豊富」「家から一歩も出ずに書籍を購入できる」「他の人の評価を見ることができる」「店舗費用や人件費が不要なので、通常の書店より安く売ることが出来る(小売価格が固定されている日本は例外)」などの新たな付加価値を提供することにより、消費者にとっての「書籍の購入体験」を根本から革新することに成功したのです。 既存の大規模書店も、書籍のオンライン販売を始めるなどの対応策は施しましたが、実店舗を持たず、優秀なソフトウェアエンジニアを雇ってソフトウェアで勝負するAmazonにコストでも機能でも対抗することは出来ず、倒産、もしくはビジネスの縮小を強いられています。 このケースがDXを理解するのに適しているのは、DXがいかに既存のビジネスにとって厳しいものかが明確な点です。多くの不動産と従業員を抱えていたことがAmazonと戦う上で大きな足枷になったことに加え、実店舗に来てくれている顧客からの売り上げを失う訳にはいかず、既存のビジネスを抱えたまま、新しいビジネスモデル(書籍のオンライン販売)を取り入れたとしても全く不十分だったのです。 Amazonはさらに、利益の全てをソフトウェア・システム、ロジスティックス(流通、在庫管理など)、コンテンツへの投資へと回し、既存の書店からビジネスを奪っただけではなく、書籍以外の物品の小売・卸売・流通に根本的なまでの改革をもたらす、巨大な企業に成長することに成功したのです。 同じことは、タクシー業界・レンタカー業界に対抗するUber/Lyft、レンタルビデオ業界に対抗するNetflix/Huluに関しても言えます。タクシー会社はスマホ予約システムを導入したところで、根本的にビジネスモデルが異なるUber/Lyftとは戦えず、レンタルビデオ業界も似たようなサービスを始めたところで、NetflixやHuluとは戦えないのです。 これらのことを踏まえて考えれば、経産省が行っている「DX認定制度」がいかに無駄で馬鹿らしいものであるかが分かると思います。国が行うべきことは、既存のビジネスの「デジタル化支援」ではなく、既存のビジネスにデジタル技術を活用した新しいビジネスでチャレンジするベンチャー企業の育成・支援でなければなりません。紀伊國屋書店やBordersが「DX認定」を取ったとしても、根本的に異なるビジネスモデルで攻めてくるAmazonと戦えるはずがないのです。 国が考えるべきは、既存のビジネスを守ることではなく、どうやったら Amazon/Uber/Netflix のような「次の時代を担う企業群」を日本から誕生させるか、なのです。 具体的な政策としては、 新規参入を妨げている規制の緩和 人材の流通を難しくしている解雇規制の緩和 リスクマネーを増やす税制、金融政策 ソフトウェア・エンジニアを育成する教育改革 貴重な理系の人材を上手に活用できていない、ITゼネコンの解体 などが考えられます。 日本には、既存の企業を守るためのさまざまな法律がありますが、それが新規参入を困難にし、日本を「ベンチャー企業が活躍しにくい国」にしてしまっているという事実があります。その背景には、政治家と企業の癒着、既得権者から構成される有識者会議、役人の天下り、星の数ほど作られてしまった特殊法人などがあり、それらの壁をぶち壊して効果のある規制緩和を行うことは簡単ではありませんが、これ抜きでは、日本のベンチャーが活躍することは不可能です。

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