日刊 大石英司の代替空港
▲▽NATO勧進帳▽▲
「頼もう! 頼もう! 我ら宇国へと向かう旅の者、この関所を通して下さらぬ
か? 頼もう!」
「はて……、見た所、73式装甲車に90式戦車のようじゃが?」
「これは世を忍ぶ仮の姿。カムフラージュというものにございます。我はマル
ダー歩兵戦闘車、ここに控える強力は、レオパルド2A5であります。30年もアプ
デしないどこぞの田舎戦車ではありませぬ」
「ふむ……。しかしのう、外務省ロシアンスクールから、怪しげな戦車、一両た
りとて通すことまかりならぬと御触れが回っておる」
「われら大義ある戦いに赴く途上にありまする。我が身の保身しか眼中にない外
交官の戯れ言など」
「その志、誠にあっぱれである。お主がその脇に差したる巻物、もしや奉加帳の
類いではあるまいか? せめてそこにある権威筋の名前など拙者が確認できれば……」
「あいすみませぬ。これは奉加帳ではなく、NATO諸国勧進帳にござりまする。物
がものゆえ、これを誰かに見せることはできませぬ。しかし、拙者がこの場で読
み上げることには問題ありませぬ」
「ほほう! それで良い。ぜひ読み聞かせてくれ」
「USA、ジャベリン、スティンガー、ハイマース……。ブリテン国、チャレンジ
ャー、NLAW、SAS、SBS……。ポーランド、フルクラム、T-72……。ドイツ、ヘル
メット。硬いヘルメット、信頼あるドイツ製の防弾ヘルメット! 最後にNATO準
同盟国からも、ヘルメット(弾抜けるかも)、防弾チョッキ(絶対!濡らしちゃ
駄目よ)、地雷探知機(根気と勇気だ!)の本邦大和の国と続きまする」
「うみゅ。お勤め大義である! 良かろう。宇国は遠いぞ。道中気を付けてな」
「ははっ! 寛大なる取り計らい、衷心よりの感謝を申し上げまする」
「うん?……、しばし、待たれよ。マルダー殿。こちらの番卒が、そのレオパル
ドの頭のかぶり物、74式車載銃ではあるまいか? と申しておる」
「そのようなことは……。そもそも7.62ミリ車載銃など世界中にありふれており
まする。何かの見間違いでありましょう。これはラインメタル社製MG3でござりまする」
「そうではなかろう! わしも総火演で見た記憶がある。このチープなガラクタ
感、噂の住重製ではないか?」
「な、なんと! ぐぬぅ……。この痴れ者が! このわしを騙せても、富樫殿の
眼力を欺けるとでも思ったかッ! あれほど他人様の持ち物に手を出すなと厳命
したではないか! わしの顔に泥を塗りよって! ペシペシ! バシバシ! バ
スンバスン、ドキュンドキュン、ズドドドド! ヴィーン!(←RWS)、ズドー
ン! ズドーン! ドカーン!」
「あいや、待たれよ! マルダー殿。もうよい! もう良いでは無いか!」
「悲しゅうございます。このような荒くれ者を信じた自分が恨めしゅうございまする」
「もうよい……。レオ2殿、今宵はそのAPFSDS弾の傷が疼くであろう。この酒を
持っていくが良い。酔いがその痛みを紛らわしてくれようぞ」
「なんというお情け!」
「さあ、先を急ぐが良い! ムネオ議員は一人では無いぞ。面従腹背で密かに宇
国の敗北を願い、ロシアの勝利こそが、われらロシアンスクール復権のその日と
画策する輩が、そこいら中に潜んでおる。この1年、毎週毎週支離滅裂なプーチ
ン擁護を繰り広げた佐藤優や、田岡元帥が出没する週刊AERAにも気を付けるのじ
ゃぞ? あれはクオリチィ・ペーパーの仮面を被った週刊誌界の東スポじゃ。宇
国はあまりにも遠い。
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