久米信行(裏)ゼミ「大人の学び道楽」
授業や講演では話せないこと。連載やSNSでは書けないこと
毎月第1-4 火曜日発行 vol.119 2023/01/24発行
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愛すべきごった煮!
井上道義ミュージカルオペラ「降福からの道」
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2.大人のミュージック&LIVE
井上道義ミュージカルオペラ「降福からの道」世界初演
こんな贅沢なことってあるでしょうか?
尊敬する音楽家が創作した新曲、
それもミュージカルオペラを、
自ら指揮した世界初演を
体感することができるなんて!
われらが新日本フィルハーモニー交響楽団が、ふるさと墨田区を本拠地にしてくれて早25年。ロック、ジャズ、ブルース、レゲエを愛するクラシック初心者の私が、定期会員になって、ほぼ毎月のようにコンサートに通ってきました。
世界中の名指揮者の熱演を間近で目撃してきましたが、井上道義(みちよし)さんの情熱的な指揮に、何度感動したことか。道義さんは、新日本フィルの元音楽監督で、その後、首席客演指揮者も務められ、マーラー、ショスタコーヴィチから武満徹に至るまで、様々なジャンルで熱演されたのです。
ところが、昨年2022年に、井上道義さんは突然の引退宣言。もう、あの熱演が観られない聴けないと嘆いていたところに、新日本フィル50周年記念に、半自伝的な自作自演のミュージカルオペラの話が持ち上がったのです。
当然ながら、すみだトリフォニーホールでの公演はチケット完売。この時ほど定期会員で良かったと思った時はありません。
例によって、私は映画を観る時と同様に、先入観を持ちたくないので、まっさらな状態でいつもの定期会員席につきました。
そして、仰天!
これまでNBS日本舞台芸術振興会の評議員として、ヨーロッパの有名オペラの来日公演も見てきましたが、全く違うのです。独創的!いや道義(みちよし)的というべきでしょうか?!最高でした!!!
高尚なクラシックというより、ゴジラのテーマやノイズミュージックまでとりまぜた本人曰く「ごった煮風」の面白さ。私も大好きな岡本太郎を彷彿とさせる主人公が、火焔式土器をかたわらして話が進みます。日本語で歌われるセリフは、ダジャレから筒井康隆ファン本領発揮のブラックでスラップスティックな笑いまで、あれもこれも織り交ぜられております。
会場は満席でしたが、シニアの真面目なクラシックファンは、果たしてついてこれたのかどうか???
二幕の、戦時中フィリピンを舞台にした主人公両親の回想シーンでは、全盛期の自由劇場「上海バンスキング」のような猥雑で、楽しくも切ない無国籍な宴。それが突然の戦争シーンに巻き込まれ、両親の秘話、主人公出生の秘密が明かにされるのでした。
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