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本が売れてうぬぼれているのかもしれないが、ムッとしたことがある。 患者さんにいきなり、「東大の老年病科に通っているのですが、主治医の先生に和田先生に診てもらう話をしたら、先生のことを知りませんでした」と言われた。 ここの教授は私の大学の同級生だが、おそらく私の話を医局員にしたことがないのだろう。 ただ、アドラーも言っているが、共感の基本は、相手の関心に関心をもつことである。 曲がりなりにも老年病科のスタッフなら、高齢者にいちばん売れている本を読まなくてもいいが、せめて何が高齢者に売れているかくらいは知っておいてほしい。 ただ、東大の老年病科というところが、私には高齢者に興味をもっている医者が集まっているとは思えない。 彼らが主導する日本老年医学会というところが、とんでもなく腐った組織だ。 この学会が編集して作った『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン』という本がある。 ものを知らない週刊誌の編集者たちが、タネ本にして、このガイドラインで危険な薬とされている薬を「高齢者に危ない薬」としてしょっちゅう記事にする。 これが信頼できるのなら、高齢者に安易な薬を使う医師たちへの警鐘になるが、とてもそうは言えない。 高齢者にうつ病が多く、自殺も多いのに、うつ病に使う薬のほとんどを「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」に入れているのだが、高齢者には非常に多くの場合で胃腸障害を引き起こし、食欲が落ちるために高齢者が元気がなくなったり、それどころかかえって骨がもろくなり、食べていないからフラフラして転倒して、その後要介護になる人も多い魔の薬とさえいえる。 少なくとも、世界的にみて、こんなに安易に骨粗しょう症の薬を出す国はない。 なのに、なぜこの学会は、これらの薬を「安全」というのか? それは、この老年医学会が社団法人になってからの初代理事長の折茂という元東大教授が、骨粗しょう症の権威で、日本中に骨粗しょう症治療の重要性を広めた人だからだ。 ただ、残念ながら、この治療の普及で骨折は減っていない。胃腸障害の副作用ばかりが増えている印象だ。 ただ、30年も前の教授の政治力で、このような配慮が働くのがこの学会の恐ろしいところだ。 この学会は、私の同級生の秋下という男が理事長になってから良い方向に向かっていたと信じていた。 多剤併用の副作用を訴えたり、高齢者に栄養と運動の大切さを「フレイル対策」という形で勧めてきたのは、感心してきた。 だが、コロナが流行ると、一転して、厚労省や専門家会議の自粛政策を一切批判せず、多くの要介護高齢者を生むもとになった。 高齢者を専門にするというのなら、そしてフレイルの危険性を訴えてきたというのなら、コロナ自粛の危険性をもっと訴えるべきではないのか? 高齢者のための学会と言いながら、昔の理事長に忖度し、今度は厚労省に忖度というのなら、高齢者の健康は守れるわけがない。

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