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モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年2月5日(日)号

ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 映画版「鬼滅の刃」歴代興行収入1位の影で危惧される日本映画界の未来 ~3~ 映画の”多様性は”どこまで守られるのか 日本のミニシアター文化を維持していくために  -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------  日本映画市場の課題が、そのいびつな構図だ。  すでに2015年の段階で、いわゆるハリウッドメジャーと邦画大手3社(東宝、東映、松竹)が占める興行収入の割合は全体の興行収入(2171億1900万円)の85%に達しており、この9社以外の映画会社で残りの15%のシェアを奪い合っている状況であった。  さらに明らかとなったのは、大手9社が実際に公開した映画の本数は、日本全国で1年間に公開された1136作品のうちの153作品(全体の13.5%)程度であり、それ以外にいわゆる低予算で作られたインディペンデント映画は983作品が作られたものの、しかし残りの15%のシェアを奪い合う状況となっている状況。  しかしながら、日本は世界でも屈指の「映画製作大国」であることは事実。そのようななかで、膨大な上映作品の”受け皿”となっているのが、大手の映画会社の系列化にない、小さな映画館であり、ミニシアター劇場である。  たとえば、2021年には一般公開された約490本の日本映画のうち、実に7割にのぼる作品が、ミニシアターで上映されていた(1)。  だが、コロナ渦のもう数年前から、そのミニシアター劇場が地方・都内各地を問わず閉館に追い込まれている。 目次 ・続々と閉館に追い込まれていくミニシアター ・経済的商業的な自主検閲 ・ミニシアター文化を維持していくために コロナ以後、どう生き残っていくか ・続々と閉館に追い込まれていくミニシアター  ここ数年、ミニシアター劇場が数多く閉館に追い込まれている。その原因としては、郊外への出店で成功を収めてきたシネコンが都心部にも進出してきたこと、上映方式が従来のフィルムからデジタルに移行していくなかで資金的に追い込まれたことなどがよくいわれている。 だが、それよりも大きな要因があるという。それは日本の映画ファンの変化だ。とくに有名俳優がでていないアート系作品に関心を寄せるマニアックな映画ファンの数自体が少なくなってしまったのだという。  「ヴィデオドローム」「ゆきゆきて、神軍」などのカルト的作品を数多く制作し、現在でも営業を続けている渋谷のミニシアター劇場であるユーロスペースの支配人である北條誠人氏は、月刊誌「創」の2013年7月号で、このようなことを語っている。  「学生の来場者は明らかに減ってます。  美大生がミニシアターを支えているというのは誤解で、以前なら渋谷周辺の青山学院や国学院、さらに早稲田、東大といった学生が学割で映画を見るために学生証を提示したものですが、今の客層は完全に中高年にシフトしています。  1996年頃までは何を上映して入る、と感じていましたが、2000年辺りから完璧に落ち始めたのを肌で感じました。」 ・経済的商業的な自主検閲  このような状況下、マニアックな、ある意味で肥えた若い映画ファンも育っていかない。その結果として、現在の日本の映画界は、「多様性」というものが失われている。  「淵に立つ」で2016年のカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門審査賞を受賞した深田晃司監督はこう語っている。 「ある意味で政治的な検閲よりも苛烈な、経済的商業的な自主検閲である。」  「市場原理主義に基づく新自由主義経済において自由を謳歌するのはごく一部の大手企業のみであったように、今、日本のインディペンデント映画は歪で排他的な業界構造の中、大手3社以外に残った2割のパイを奪い合っている状況にある。    結局、そのしわ寄せは現場へと押し寄せ、保障のない不安的な生活や低賃金、長時間労働といった劣悪な撮影環境へと反映される。  そこで最初に脱落するのは、経済的弱者や体力的弱者で、公正で自由な競争原理ならびに人材の多様性を保つことが困難となるのだ。映画のジェンダーバランスの不均衡もこれと無縁ではないはずだ。」

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  • 日々流れるニュースを、様々な視点から分かりやすく解説するニュースサイト「ジャーナリスト 伊東 森の新しい社会をデザインする The Middle News Journal」のニュースレター有料版です。 いまだ私たちに伝えられてこないマスコミの情報は、残念ながら存在します。 「そもそも?」「Why?」を大事に、マスコミの情報を再編集し、様々な視点や確度から執筆していきます。 その「水先案内人」として、私の仕事が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
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