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喘息治療の変遷

ドクター畑地の診察室
ドクター畑地の診察室177.2023.2.5. 現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。 世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信! https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php **************************** 喘息治療の変遷  私が大学を卒業した当時、勤務先は四日市にある塩浜病院と言う病院でした。今から45年ほど前までは、四日市と言うと大気汚染の街のイメージがあり、社会の時間には必ず「四日市喘息」と言う病気を習ったものです。四日市喘息の診断基準は、四日市に在住している喘息患者さんであり、その患者さんたちは、四日市以外の街に住んでいても喘息になった可能性がある訳ですから、喘息患者全員が公害と因果関係があるかと言われると少し疑問に思うところはありました。  また、この「四日市喘息」の問題は、患者への補償金や、患者が受診する医療機関の収入等と複雑に利害が絡まっていたこともあり、一概には語れない深いものがありますが、こちらではそのことを書くのは本題ではありませんので、またの機会に譲ります。しかしながら、他地域の喘息患者さんに比べ、四日市に住む喘息患者さんは重症である方が多かった事は事実です。  今から30年ほど前、私が研修医だった頃、四日市に勤務していたこともあり、夜になると必ず数人の喘息患者さんが発作を起こし、点滴や吸入をしに来ていたものです。毎日のように点滴に通う患者さんもおり、救急外来は喘息患者さんで大盛況でした。点滴の内容は、今ではほとんど行われなくなった(点滴する先生もたまにはいると思いますが、私はここ25年使用していません。)ネオフィリンと言う気管支拡張剤 の点滴と、ステロイドです。ネオフィリンの注射に至っては、本当ならば副作用を避けるためゆっくりと希釈して点滴で落とさなければいけないわけですが、常連の患者さんになると、静注してくれということで1アンプルそのまま静脈注射していた記憶があります。(今ならきっと医療安全で引っかかるでしょう)  ところがいつの頃からか、救急外来に喘息患者さんがほとんど来なくなりました。研修医の時代と、今は何が変わったのでしょうか。  当時、塩浜病院で行われていた喘息の治療は、ネオフィリン徐放剤の内服、ステロイド内服と、短時間作動型の気管支拡張剤をネフライザーで吸入することでした。多くの難治性喘息患者さんは、ステロイドをかなり内服していたため、ステロイドによるムーンフェイスが起こったり、その他いろいろな副作用が発現していたような気がします。にもかかわらず大勢いる難治性の喘息患者さんに頭を悩ませたものです。その 当時、塩浜病院では、病院独自の治療として、注射による減感作療法(ブロンカスマベルナを注射する非特異的な減感作療法で、今では殆ど行われていません。ただ、最近は特異的な減感作療法はある程度効果があるとされ、花粉症のみならず、喘息にも減感作療法を行う医師もいます)が行われていましたが、印象としてはあまり効果的な印象は受けませんでした。  さて、それが私が大学を卒業したてで研修医の時の喘息治療です。喘息治療はここ30年、最も進歩してきた治療の一つですので、一口には語れません。10年単位位ずつ、数回に分けてお話をしていきたいと思います。  話は全く変わりますが、先々週来の読書ネタを1つ。自分が最も楽しみにしていた、書籍に対する賞は、「日本冒険小説大賞」でした。しかしながら、そのジャンルの出版が激減した上、賞自体が無くなってしまったことは非常に残念です。その代わりと言っては何ですが、今最も楽しみにしている賞は何と言っても「本屋大賞」です。今年の本屋大賞は個人的な意見を言わせていただくと、小川哲さんの「君のクイズ」で決まりだと思います。直木賞の「地図と拳」のような小説から、こんな話まで幅広く書けるなんて、どんな作家なんだと感心することしきりです。しばらく小川哲さんからは目が離せません。 ***************************** ドクター畑地の診察室177.2023.2.5号 毎週日曜日お昼に配信予定です。 次号は2023.2.12.です。 お問合せ、感想などはコチラまで zm.magumagu@gmail.com 畑地 治 https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 https ://mie-matsu-kokyuki.mars.bindcloud.jp/ https://www.facebook.com/mch.respiratory.center/ 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ***************************** ★お知らせ★ 好評発売中『ドクター畑地の診察室』バックナンバー 1ヶ月分を220円で購入できます。気になった号がある方はぜひチェックしてみてください! ◆2023年01月 https://www.mag2.com/archives/0001688238/2023/01

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