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第204号 H3ロケットは中止か失敗か/ハナコの虹/春の土/6869(ロバロック)

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  • 2023/02/22
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「H3ロケットは中止か失敗か」 JAXA(宇宙航空研究開発機構)は17日、種子島宇宙センターから新型主力機H3ロケット初号機の発射を予定していましたが、すでにカウントダウンに入っていた状況で、直前に中止されました。JAXAによると、主エンジン「LE-9」は発射予定時刻の6.3秒前に正常に着火しましたが、その後、主エンジンを含む機体の1段目の制御システムが何らかの異常を検知したため、補助の固体ロケットブースター「SRB-3」に着火する信号が出ず、発射の0.4秒前に中止したそうです。 国産ロケットの現在の主力機は、1994年から運用されて来たH2ロケットをベースに改良が施され、2001年から運用されて来たH2Aロケットです。しかし、すでに20年以上が経過しているため、H2Aロケットの後継機として開発されたのが、今回のH3ロケットでした。全長53メートル、直径4メートル、総質量445トンだったH2Aロケットと比べると、H3ロケットは、全長63メートル、直径5.2メートル、総質量574トンと、大きさも重さもひとまわり大きくなりました。 しかし、H3ロケットの開発目的の最重要課題は「打ち上げコスト削減」だったため、ロケット本体は大きく、重くなりましたが、1回の打ち上げ費用は、これまでのH2Aロケットが85~120億円だったのに対して、何と50億円にまでコストカットすることに成功したのです。しかし、本当の意味で「成功」と言えるのは、無事に打ち上がり、搭載していた地球観測衛星「だいち3号」が予定通りの軌道に乗った時点で言えることです。 今回は、JAXAの岡田匡史(おかだ まさし)H3プロジェクトマネジャーが記者会見で、「中止自体は非常に大きなことと受け止めている」と述べた一方で、発射直前に制御システムが何らかの異常を検知して安全に停止したことを理由に「失敗とは考えていない」との見解を示しました。この見解は「一理あり」で、制御システムが正常に稼働せず、異常を見過ごして発射し、空中で大爆発‥‥ということにでもなっていたら、それこそ「大失敗」だったからです。 しかし、今回の記者会見では、岡田マネージャーと共同通信社の記者のやりとりが切り取りで報じられ、こちらのニュースのほうがひとり歩きしてしまいました。「中止」という表現を繰り返す岡田マネージャーに対して、共同通信社の記者は「それは一般的にいう失敗なんじゃないですか?」と何度も執拗に質問を繰り返し、それでも岡田マネージャーが「制御システムが正常に稼働したことによる中止」と説明すると、記者は「分かりました。それは一般に失敗といいます。ありがとうございます」などと突き放すように言って質問を切り上げたのです。 記事にする上で、どうしても岡田マネージャーの口から「失敗」という言質(げんち)を取りたかったのかもしれません。しかし、これまでコツコツと開発努力を続けて来て、ようやく迎えた打ち上げが「中止」に追い込まれたことで、涙ぐんで悔しがっていた岡田マネージャーにとっては、傷口に塩を塗り込まれるような気持ちだったと思います。負けて帰って来た日本代表チームの監督に、責任を追及するような物言い、とても残念でした。 ロケットの打ち上げに関しては、他の国でも、中止や延期は頻繁に起こっているので、特に珍しいことではありません。しかし、今回のケースは、なんだかんだと約2年近く延期されて来た計画だったため、種子島でもいつも以上に盛り上がっていましたし、中継でも盛り上がっていました。そこでの「中止」だったため、「多くの人々の期待が裏切られた」→「責任者が失敗だと認めるべき」という、誰かを吊し上げないとコトが収まらない最近の風潮に流れてしまったのかもしれません。 あたしから見れば、制御システムが正常に稼働し、大損害が出るかもしれない事故の可能性を直前に回避できたのですから、打ち上げ自体は「中止」という残念な結果となってしまいましたが、ある意味、実験としては「成功」だったと思っています。今回の経験からシステムを見直し、より安全な修正を加えた上で次の打ち上げへ移行できるのですから、何よりの結果だと思っています。

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