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喘息治療の変遷パート2その2

ドクター畑地の診察室
ドクター畑地の診察室180.2023.2.26. 現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。 世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信! https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php **************************** 喘息治療の変遷パート2その2  さて、大学卒後3年目以降、吸入ステロイドによる喘息治療を実践した私は、すっかり名医気分になりました。治療が難しかった喘息患者がみるみるよくなるからです。  その当時、吸入薬といえば2通ありました。発作を改善するための気管支拡張薬、β刺激薬と言う種類の薬ですので、短時間作動型β刺激薬と言う意味で「SABA」と言います。もう1つは定期的に使用することにより、発作をそもそも起こらなくするための「吸入ステロイド」の2通です。SABAについては、発作時に使用すると喘息症状が改善し、患者さんがよく効いたような気分になります。したがって発作が起 こるたびにSABAを使用すると、それなりにその時は症状が良くなるわけですが、すぐに効果が切れてしまいます。「発作が起こり苦しくなる→SABAを使用する→発作は楽になるがすぐに効果がなくなる→SABAをまた使用する」が、負のサイクルの始まりでした。発作時にSABAを使用するだけの治療を繰り返すことにより、喘息の難治化、ひいては喘息死につながる訳です。  一方、「吸入ステロイド」は発作時に使用しても全く効果がありません。したがって、患者さんがSABAと同じ感覚で使用すると、全く効果がない薬と思い込んでしまうリスクがあります。しかしながら定期的にしっかりと吸入すると、みるみると喘息が改善するわけです。いかに吸入ステロイドをしっかりと定期的に吸入させるかが、喘息治療の鍵でした。(SABAのように発作を改善させる薬を「リリーバー」、吸入ステロイドのように安定期からしっかり吸入させることにより喘息発作を起こらなくする薬を「コントローラー」と言います。)  吸入薬は出しっぱなしでは喘息は改善しません。しっかりと吸入指導を行い、いかにコントローラーを定期的に使用することが大切かを繰り返し説明します。一度では忘れてしまいますので、自分の目の前で、そして診察のたびに何度も繰り返し説明するわけです。いち早く吸入指導をしっかりと実践した私は、喘息治療に確かな手応えを掴むことができ、みるみるよくなる患者さんを何人も見ました。自分が喘息だったことも相まって、そのことが呼吸器内科医を志望するきっかけとなりました。  その頃、内服薬でも喘息に対して有望な薬が出てきました。ロイコトリエン受容体拮抗薬と言う種類の薬です。現在では、花粉症、特に鼻閉にも用いられる薬です。喘息に保健適応があるものの、全く効果がなかった従来の抗アレルギー剤とは異なり、ある程度の効果は期待できました。今も存在するのは「プランルカスト」と「モンテルカスト」と言う薬ですが、それぞれプランルカストは「オノン」、モンテルカストは 「シングレア」あるいは「キプレス」と言う商品名で上市されています。もう1剤、ザフィルルカストと言う薬も「アコレート」と言う商品名で上市されてましたが、日本における容量設定が、欧米の容量設定の2倍であったためか(一般的に、日本における薬剤の容量設定は、欧米と同量又は若干少ないことが多いのですが、この薬は逆でした)効果は他の2剤よりありましたが、重篤な肝障害の出現により、販売中止となっています。  ロイコトリエン受容体拮抗薬は現在でも使用されています。人によっては若干消化器症状が出ることもありますが、まずまずの効果があります。内服薬のため、特別な服薬指導も必要でなく、便利な薬ではありますが、根本的に発作を止めてしまうほど効果はありませんでした。  1990年代前半の喘息治療は、吸入ステロイドの使用を契機に劇的に向上しましたが、まだまだ不十分な点もあり、その後の進歩に期待がかかった訳です。  さて、この文章を書いているのは2/23日夜(書き終わりは2/24)です。前日(2/22)某知り合いから、ニューバランススニーカーの履きやすさを散々聞かされた私は、欲しくて欲しくてたまらなくなり、休日でしたので、名古屋のニューバランスショップまでスニーカーを買いに行きました。  一口にニューバランススニーカーと言っても色んな番号のものがあり、どれを買って良いのかわかりません。知り合いに尋ねてみると、定番は「996」のグレーとのことでした。「996」を買うため、名古屋まで車で1時間半かけて行った訳(結局買ったのは、限定販売本日入荷と言われた990v6と言うスニーカー)ですので、帰りには三重県の書店より品揃え豊富な書店に立ち寄りたくなるもの、と言うわけで、名古屋駅高島屋ゲートタワー内三省堂書店に立ち寄りました。  本屋をふらふらしていると、表紙の帯に「読むなよ、絶対に読むなよ」と書いてある本を発見。こんな本をみるとついつい買いたくなります。「言語学バーリトゥード」と言う本を帯に引かれて購入した私は、早速読んでみました。帯には、他にも、ラッシャー木村の「こんばんわ」にファンがヅッコケタわけとか、ユーミンの「恋人がサンタクロース」をなぜ「恋人はサンタクロース」と勘違いするのかなど記載されており、興味深いサブカルチャー本と思って購入しましたが、中々どうして、面白いだけでなく骨のある内容で、非常に勉強になりました。  その中に、AIでは「絶対に押すな」を理解することは難しいと書いてありました。それだけ読むと何のことかわからないのですが、要するに、AIは「意味」は理解できるが「意図」を理解することは難しいのでは?と言うことです。  読者の皆さんは、「意味」と「意図」の違いを説明できますか?本の中にはダチョウ倶楽部上島さん(ご冥福をお祈りします)が、熱湯の前で「絶対に押すな」と言っているシーンが記載されてました。「意味」は文字通り押すなですが、「意図」は意味とは正反対の押せであるとの説明、成程、と思ってしまった訳です。と、考えると帯の「読むなよ、絶対に読むなよ」を見てこの本を購入した私は・・・やはりAIより一枚上手かも。  この本、東京大学出版会のPR冊子のUP(University Press)に3か月に一度連載されたものをまとめた本だそうです。思わずUPの購読を申し込もうと思った私でした。 ***************************** ドクター畑地の診察室180.2023.2.26号 毎週日曜日お昼に配信予定です。 次号は2023.3.5.です。 お問合せ、感想などはコチラまで zm.magumagu@gmail.com 畑地 治 https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 https ://mie-matsu-kokyuki.mars.bindcloud.jp/ https://www.facebook.com/mch.respiratory.center/ 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当

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