【転機】
「いらっしゃい…ませ」
その日はヒマだったので、片付けを終わらせて2時ちょうどに閉めるつもりだった。
閉店は2時なのだが、お客様がいっぱいのときは、なかなか帰ってくれないので、3時、4時は当たり前だった。
みつおは残業代よりも早く帰りたかった。
早く終われば、飲みに行ける店があるのだ。
いつの間にか、真夜中に飲み歩くようになっていたのである。
今日はどこに行こうかと考えている矢先だった。
もう閉めるつもりで外の看板も灯りを消していたのだが…
「おーい、マーマーいるー?」
ベロンベロンに酔っ払って入ってきたのは、ママさん目当ての常連さんである。
ある大手の電気メーカーの会長である。
いつもどこかの会社から接待されると、その後に五番街に来るのがお決まりだった。
「あーら、社長、また酔っ払ってきたの?たまには早い時間にきてよ」
「ぜーんぜん酔っ払ってないよ、何を言っとるか君は」
いつものお決まり会話が始まった。
みつおは諦めて準備を始める。
キープボトル棚から社長のキープを探して、氷と水を用意する。
絶対に食べないがお決まりのチャームも用意する。
「食べないから出さなくていいよ」
と言うのだが、
「大丈夫よ私が食べるから出してちょうだい、それとソーメンチャンプルーも出して」
料理のおばちゃんは1時には帰るので、その後はみつおが料理をするのだった。
簡単な料理をおばちゃんに教えてもらっているので、慣れたものだった。
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