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「チェザルピーノの鉱物学:気象論とキミアのはざまで」(中編)

BHのココロ
  • 2023/03/02
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今回は、前々号につづいて新作英語論文「チェザルピーノの鉱物学:気象論とキミアのはざまで」の中編をお送りします。今回は、鉱物の本質と生成について、そして金属の本質と生成をあつかい、とくに後者では錬金術の伝統的な理論を、アリストテレスの自然哲学の枠組みでチェザルピーノが再解釈していく様子を描きます。とくに気象論に依拠している点が、チェザルピーノの再解釈の肝といえるでしょう。 3. 鉱物の本性と生成  つぎに「掘出物」、つまり鉱物の生成に眼を向けてみよう。チェザルピーノによれば、鉱物のなかで土類はもっとも単性のものであり、乾いた蒸散気に由来する乾いた物体だという。それらは粉末になる傾向をもち、湿気なしに各部位はひとつの塊をなしえない。土類の形成は二通りがある。ひとつは乾いた蒸散気の冷却であり、蒸気の状態から粉末に直接に変化する。 もうひとつはそのほかの混合物の「腐敗」である。たとえば、強烈な火の作用によって石類が本性に大きな変化を受けると、雨水に溶解するようになる。こうして山々でさえ、気がつかないうちに徐々に溶解して土類へと変化するのだ。  チェザルピーノは塩類の名称を明礬や硝石などに適用する。これらの物質も乾いた蒸散気に由来するが、とくに水性の溶媒によって溶解する。塩類は土類と異なり、土類よりも熱の作用による影響を受けにくい。各塩類は、固有の味覚をもっている。塩類の生成にも二通りがある。ひとつは乾いた蒸散気の冷却であり、もうひとつは燃やされたワインの残渣のように物質の燃焼に由来する。    チェザルピーノの油性鉱物も乾いた蒸散気に由来するが、こちらはとくに油性の溶媒によって溶解する。硫黄と瀝青が典型的な物質となる。アグリコラはこれらを塩類とともに凝固汁に分類していた。彼の名前に言及することなく、チェザルピーノはこうした「混同」を批判する。油性鉱物が水性の溶媒によって溶解しないからだ。 すでにみたように、彼の体系では「脂質」と「非脂質」という二種類の乾いた蒸散気が存在する。油性鉱物は脂質の乾いた蒸散気に由来し、そのために可燃性であり、各種の油のような揮発性の高い湿気を含んでいるという。

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