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【死んでも書きたい話】 旅券発給拒否裁判にいよいよ判決か?

安田純平の死んでも書きたい話
2月6日にトルコを震源地に発生した地震は死者が5万人を超える大惨事となっています。トルコではマンション群まで原型を留めないほどの瓦礫と化し、私が知っているはずの街も見る影もない姿となってしまいました。 それなりのホテルでもおそらく壊滅状態です。治安の悪化も報じられており、現場の取材はかなりの障害がありそうです。たとえば2015年に私がシリアに入った晩に夕食をとった民家など現存しているのかどうかは分かりません。行けさえすれば特定できる自信はありましたが、もはやそれも難しいかもしれません。私をシリア国内へ誘導する道案内役としてメディアが報じていた人物の顔は、私が会った人物とは明らかに違っており、その家まで行ければ本物の正体に迫れたかもしれませんが、もう不可能かもしれません。 2018年に帰国してからすでに4年がすぎ、トルコ側も含めて関係者を見つけるのはそもそも困難だったかもしれませんが、ますます難しくなってしまいました。できるだけ早い段階で調査をすべきだったのですが、私には不可能でした。全て、日本政府による旅券発給拒否が原因です。 外務省が掲げている旅券発給拒否の根拠は「トルコが5年間入国を禁止をしているから」です。旅券が発給されていたとしてもトルコには入国できないので、トルコで調査をすることはできないことになっています。トルコが本当に入国禁止にしているならば入国できませんし、そうであれば当たり前すぎることですがトルコに行く気もありません。 しかし、そのトルコによる入国禁止も2018年のトルコ出国当時には通知されておらず、後から付けられたものとしか考えられず、発給拒否の根拠からして日本政府が画策したものとみるのが妥当と思います。 発給拒否事件について改めて整理します。私は当事者ですので、当事者としての感想を込めてお送りします。 旅券発給拒否処分の根拠は「2018年10月24日にトルコから5年間の入国禁止措置を受けたから」で、旅券法13条1項「外務大臣又は領事官は、一般旅券の発給又は渡航先の追加を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当する場合には、一般旅券の発給又は渡航先の追加をしないことができる」のうちの1号「渡航先に施行されている法規によりその国に入ることを認められない者」に該当する、というものです。 これに対し、(1)旅券発給拒否処分の取り消し、(2)一般旅券の発給、(3)一般旅券(トルコを除く)の発給を求める裁判を2020年1月から行っています。国側が意図的ではないかと思えるような杜撰な書類を提出して出し直しになるなど、だらだらと続いている間に「トルコが入国禁止」の5年も今年2023年10月24日で切れることになりそうです。年内に判決が出るのかどうかも疑わしい展開ですが、発給拒否の根拠である「トルコが入国禁止」がなくなったらどのような判決になるのか、旅券が出るのか、現時点では不明です。 まず、前提である「トルコが5年間入国を禁止をしている」ですが、2018年10月24日のトルコ出国までの間に私自身はトルコから通知を受けていません。それどころか、「入国禁止になるのか」との私の問い「そんなことにはならない」と職員が答えていました。 入国禁止については2019年1月7日に新宿パスポートセンターで初めて言われたのですが、裁判の中でその入国禁止措置が事実である根拠を国側に求めたところ、2018年10月24日にシリアに近いアンタキヤの入管施設で私に通知をしたというトルコの書類を出してきました。しかしその通知の内容は「強制退去」についてとなっており、入国禁止措置ではありません。 その入国禁止措置を通知したというアンタキヤの入管施設の書類へのサインを私が拒否したことになっており、サイン欄は空白です。通知の時間は「22:00」と手書きで書かれていますが、その時間にはすでにイスタンブールの空港にいました。 トルコの法律では強制退去になった時点で入国禁止措置が取られることになっており、強制退去であったかどうかが問題なのですが、強制退去処分にした時点で本人に通知しなければならないことになっているにもかかわらず、その通知の証拠として出された書類が疑わしい代物なのです。

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  • ジャーナリスト安田純平が現場で見たり聞いたりした話を書いていきます。まずは、シリアで人質にされていた3年4カ月間やその後のことを、獄中でしたためた日記などをもとに綴っていきます。
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