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喘息治療の変遷パート2その3

ドクター畑地の診察室
ドクター畑地の診察室181.2023.3.5. 現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。 世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信! https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php **************************** 喘息治療の変遷パート2その3  喘息は気道の炎症によって起こってくる病気です。この炎症を抑えるのに非常に有効な薬はステロイドなのですが、このステロイド、点滴や内服薬で投与すると、非常に副作用が多く、使いにくい薬でした。しかしながら、吸入ステロイドは、副作用が少ないので使いやすい上、気道に直接作用し、炎症を抑えるので非常に効果的でした。  一方ステロイドは、喘息の症状、特に気道が攣縮することにより、呼吸困難が起こることに対して、直接効果があるわけではありません。気道の攣縮を直接防ぐには、気管支拡張薬が必要で、喘息の治療には吸入ステロイドだけでなく、気管支拡張薬を併用した方が良い訳です。気管支拡張薬のうち、最も喘息に対して効果的なのは、β刺激薬と言う種類の薬なのですが、内服で飲むと振戦(手指が震える)や動悸などの副 作用が厄介でした。そこで開発されたのは、ステロイドと同じく吸入薬です。β刺激薬の吸入は非常に効果的でしたが、当時は、短時間しか作用しないSABAと言う吸入薬しかなく、発作止めには使用できるものの、長時間のコントロールには不向きであり、長時間効果が持続する吸入薬の開発が望まれました。  長時間作用する内服でないβ刺激薬として最初に上市されたのは、吸入薬でなく、貼付薬でした。ホクナリンテープ(ツロブテロール)と言う名称で開発された2cm程度の貼付薬は1日にわたって効果が持続し、非常に効果的でした。この薬は今でも良く処方されており、風邪をひいて息苦しい時など、処方してもらった経験のある方も多いと思います。その後、長時間作用するβ刺激薬の吸入薬(LABA)が開発されて用いられるようになるまで、喘息治療にかなり用いられました。  さて、ここからはあくまでも自分の私見ですが、日本人は湿布を貼る文化があるためか、貼付薬が大好きです。心臓の冠動脈を拡張するニトロ製剤にも貼付薬が好まれるのと同様、気管支拡張薬にもこの貼付薬が非常に良く用いられます。体に貼ることにより、安心感があるためでしょうか。しかしながら、きっちりとした吸入方法でLABAを吸入する方が、貼付薬を使用するより、明らかに効果的なことは言うまでもありません。貼付薬でもかなり喘息のコントロールがうまくいっていた患者さんの貼付薬を中止し、その後しばらくして上市されたセレベントと言うLABAの吸入薬に変更した時、多くの喘息患者さんの症状は改善しました。  話は変わりますが、松阪の名物に松阪牛があります。市内には何軒か松阪牛を販売する精肉店がある訳ですが、そんな中の一つに、丸中精肉店と言う店があります。こちらの店では、コロッケやトンカツなどの惣菜も名物で、その場で揚げてくれます。さて、この丸中精肉店のトンカツ、懐かしい味がするわけです。  3月は卒業式のシーズンでもありますが、受験のシーズンでもあります。卒業式になると、母が必ず出席してくれましたし、受験前日の夕食はビフテキ、当日の朝はトンカツと決まっていた訳です。(テキにカツと言う意味を込めて)そのためか?少し自慢になってしまうかもしれませんが、受験して不合格になったことは一度もありません。受験前日から当日までの食事内容は、今考えると少し胃にもたれそうですが、育ち盛りの自分には、全くそんなことはなく、ある一つの欠点を除いては大好きな食べ物でした。  母が作る料理、美味しかった訳ですが、火を通しすぎるのが欠点でした。母が作るトンカツは、いつも少し揚げ過ぎで堅めでした。もちろん、ステーキは常にスーパーウエルダンです。社会に出てから、トンカツを外食で食べるようになり、トンカツとはこんなに柔らかいものだったのかと驚いた覚えがあります。  この丸中精肉店のトンカツ、良く言うと「母の味」な訳です。揚げている店員さんにもう少し揚げる時間を短くしてほしいとアドバイスしようといつも思っていますが、できたことはありません。  昨日、松阪看護学校の卒業式に来賓で出席した帰り道、認知症になった母に思いを馳せてしまいました。今日の夕食は丸中精肉店のトンカツを買って食べようかなぁ。 ***************************** ドクター畑地の診察室181.2023.3.5号 毎週日曜日お昼に配信予定です。 次号は2023.3.12.です。 お問合せ、感想などはコチラまで zm.magumagu@gmail.com 畑地 治 https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 https ://mie-matsu-kokyuki.mars.bindcloud.jp/ https://www.facebook.com/mch.respiratory.center/ 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ***************************** ★お知らせ★ 好評発売中『ドクター畑地の診察室』バックナンバー 1ヶ月分を220円で購入できます。気になった号がある方はぜひチェックしてみてください! ◆2023年02月 https://www.mag2.com/archives/0001688238/2023/02

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