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[高野孟のTHE JOURNAL:Vol.590-1]資料編1

高野孟のTHE JOURNAL
〓〓INSIDER No.426 1999/4/15) 〓〓〓〓〓〓〓〓〓 行き詰まるNATO空爆作戦――外交解決への模索も   NATOによるユーゴに対する“人道的な”空爆は、3週 間を経て何ら所期の目的を達成できないばかりか、むし ろコソボの状況に全くの逆効果をもたらしている。4月 12日に開かれたNATO外相会議は、そうは言ってもいま直 ちに大規模な地上軍派遣を決断できないため、とりあえ ず空爆を続行し、さらに機数を増やして強化する方針を 確認しながらも、他方でロシアの仲介と参加による外交 的解決に期待をかけるという、何とも中途半端な結論に しか至らず、それをめぐって各国の足並みの乱れも目立 ち始めた。 ●民間人も殺傷  彼らの当初の判断は、大規模な空爆を実施すれば、ユ ーゴの独裁者ミロシェビッチ大統領は、95年8月のボス ニア・ヘルツェゴビナ紛争の場合と同様に、たちまち降 参してコソボから撤収し、アルバニア系住民の自治権を 認める和平案を受け入れ、そのため国内で支持を失って 政権崩壊に至るだろう――というものだった。ところが 現実には、セルビア人は屈服しないどころか、ますます ミロシェビッチの下に結束を固めて、一層激しくアルバ ニア系に対する攻撃を展開し、そのために100万人近い 人々が難民と化して国境に押し寄せるという深刻きわま りない事態が生じた。  空爆は、第1段階でユーゴの防空網を破壊した上、第 2段階で主要な軍事施設や戦車など部隊の戦力そのもの を壊滅するという計画で始まったものの、思わぬ結果に 焦って、空爆の効果を早く上げようとする余りに、石油 関連施設、自動車工場、鉄道、橋、放送局など市民生活 に多大な影響を与える非軍事施設に拡大され、また列車 や住宅地への“誤爆”もあって、ユーゴの民間人にも多 数の死傷者が出ている。ロシア外務次官は13日「民間人 400人以上が死んだ」と述べた。  イラクやスーダンやアフガニスタンに対する爆撃でも そうだが、元々軍事施設だけに打撃を与える“人道的 な”空爆など、テレビゲームのやりすぎによる幻覚にす ぎない。まして、そのように空爆の恐怖に晒されたユー ゴの人々が、ミロシェビッチに怒りの矛先を向けて政権 打倒に立ち上がるだろうなどと期待するのは全くのジョ ークである。合理的な思考方法を得意とするはずの欧米 の指導者たちが、すでにベトナム戦争時の北爆でもバグ ダッド空爆でも効果のないことが立証済みであるにも関 わらず、また同じ判断ミスを繰り返すのは、後に述べる ように、東方世界に対する文明論的な無理解、差別意識

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