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[高野孟のTHE JOURNAL:Vol.590-3]資料編3

高野孟のTHE JOURNAL
〓〓INSIDER No.431 1999/7/1 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 何のための戦争だったのか?――ユーゴ空爆の損益計算       NATOのユーゴスラビアに対する11週間に及ぶ空爆は、 延べ約3万5000回の出撃で巡航ミサイル=トマホーク 2000発を含めて2万3000発、広島原爆に換算して10発分 を上回るほどの爆弾を投下して、ようやくミロシェビッ チ大統領に和平案を受諾させることに成功した。  ところが不思議なことにこの和平案は、2月のランブ イエ和平案と比べると大幅にユーゴ側に譲歩した内容に なっている。いったいこれは何のための戦争だったの か。 ●和平案の謎  第1に、旧和平案ではコソボの平和維持にNATOが責任 を持つことになっていたのに対し、新和平案では少なく とも形式上、国連を背景にしてロシアも含めた国際混成 部隊とされており、現にそのような部隊が現地に進駐し ている。  第2に、旧案では進駐部隊がユーゴ内の施設に無制限 に立ち入る権利を認めていたが、新案ではその条項は削 除された。  第3に、何より重要なことに、旧案では3年後にコソ ボの帰属を決める住民投票を行うとの約束が盛り込まれ ていたが、新案ではそれは消えて、コソボの独立問題に はまったく触れていない。  つまり、ランブイエでミロシェビッチ側が「主権にか かわることだ」として受け入れを拒否した条件のほとん どがなくなっている。このランブイエ案をミロシェビッ チが受諾しないのはけしからん、武力を用いてでも受け 入れさせようということで、3月24日から空爆が始まっ たというのに、その受け入れさせるべき条件を米欧側が 取り下げてしまったのはどういうわけなのか。  しかも、空爆中の5月27日には、オランダのハーグに ある国連旧ユーゴ戦犯法廷がミロシェビッチ以下5人の ユーゴ高官を「コソボのアルバニア人74万人の追放と 348人以上の殺害」を計画し命令した「戦争犯罪人」と して起訴し、逮捕状まで発している。米欧側はそれを盾 に、ユーゴに新しい政 権が出来てミロシェビッチの身柄を引き渡すまでは空爆 は止めないという態度を取ることも出来たはずである。 にもかかわらず、新和平案ではミロシェビッチの処遇に ついて一言も触れていない。それどころか、ミロシェビ

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