今週のざっくばらん
ビル・クリントン氏とゾンビ
先週、ビル・クリントン氏(第四十二代アメリカ合衆国大統領)と30分ほど1対1で話す機会があったので、その報告です。
その日、いつも海岸でのエクササイズを仕切ってくれている人たちが、釣った魚のバーベキュー・パーティをするというので、妻と浜に行きました。すると、途中ですれ違った人に見覚えがあったので、「今のビル・クリントンじゃない?」と妻に聞くと、彼女も驚いて首を縦に振ります。
BBQ会場について、列に並んでいる時に、前にいる知り合いに「今、ビル・クリントンに会ったんだけど」というと、「このコミュニティに泊まっているらしい。娘さんはまだそこにいるよ」と教えてくれました。
後から分かったのですが、私の家が属しているコミュニティのオーナーの一人が、クリントン氏のお嬢さんと仲が良く、家族そろって遊びに来ていたそうです。VIPがこのコミュニティに来るらしいという噂は聞いていたのですが、それがビル・クリントン一家だったのです。
とはいえ、お腹が減っていた私にとっては、お目当ての魚を食べることが最優先です。紙のさらに美味しそうな魚のから揚げ(バーベキュー・パーティと言いながら、から揚げがメインでした)を二つ皿に取り、食べる場所を探しました。すると、部屋の真ん中のの長いソファーに空きがあるので、妻と座りました。妻が端に座りで、次が私、その次が3歳ぐらいの子供と、その父親、という順番です。
隣に座った子供には、私の妻が「何歳なの?」などと話かけましたが、人見知りなのか、まともに返事をくれず、お父さんが申し訳なさそうに、「3歳です」などと答えてくれました。
そんな座り方で、魚のから揚げを夢中で楽しんでいた私が、「クリントンさん戻って来ないのかな」と私の妻に話しかけると、「あなたの隣にいるわよ」という返事が返ってきました。子供はそのままでしたが、父親の座っているところにクリントン氏が座って、魚のから揚げを食べているではないですが。このお子さんは、クリントン氏のお孫さんだったのです。
せっかくの機会なので、話しかけようとは思ったのですが、何を話して良いのか分からないし、クリントン氏も骨の多い魚の唐揚げと格闘しているので、話しかけることは出来ませんでした。
しばらくすると、その子供の父親(クリントン氏の義理の息子)がやってきて、「僕らは家に戻っているけど、ジョンはまだここにいるから」と言い残して、私とクリントン氏の間にいる子供を連れていってしまいました。
間にいた子供がいなくなってしまったこの状況で話しかけないとは逆に失礼と思い、思い切って「この魚、美味しいですね」と話しかけると、とても嬉しそうに、子供が置いていった「地元の魚カタログ」のフグを指差し、「この魚には毒があるんだ。日本だと特別な調理師免除を持っている人しか料理できないのに、ハワイでは誰でも料理が出来るのは変だと思わないか?」と話しかけて来ます。私が「私の次男は、日本で修行した料理人で、日本に帰った時に、フグ調理師の免許を取得しています」と答えました。
すると突然、クリントン氏は、「フグが持つ毒はテトロドトキシンと呼ばれる植物ベースの毒で、これがゾンビの原因なんだ」と話始めます。
最初は聞き間違いだと思ったのですが、さらに驚いた時に、「私とヒラリーは、遅めの新婚旅行でハイチにいったんだけど、ハイチの街にはゾンビがいて、人に噛み付いたり、道端にいる鶏の首を食いちぎったりしているんだ」と続けます。
この時点で、私は、失礼ですが、クリントン氏が痴呆症にでもかかっているのかと本気で心配しました。しかし、あまりに面白そうな話なので詳しく聞くことにしました。
結局、30分ほどゾンビについて話し込むことになってしまいましたが、彼の話を要約すると、
当時のハイチには、刑務所がなく、犯罪者は、ブードゥー教(元は西アフリカの宗教で、奴隷として連れてこられた人たちによってハイチなどに広まった宗教)の神官が特殊な配合の薬(ゾンビ・パウダー)を処方し、それによって1日から3日間の、意識はありながら全身が麻痺した仮死状態になる、という刑罰を受けることになっていた。
この薬にはフグの毒と同じテトロドトキシンが含まれており、それにより神経が麻痺して呼吸がほとんど出来なくなり、脳への血流が減る。
テトロドトキシンの量が多すぎると、脳が修復不可能なダメージを受け、その人は体は健康なのに脳だけが麻痺したゾンビ状態になってしまう。
となります。クリントン氏によると、ハイチでは、現在でも一部の地方では同様のことが行われているそうです。
ちなみに、クリントン氏があまりに熱心にこの話をするため、私は席を外せなくなり、二人で30分ほど話し込むことになってしまいました、その間、周りにいる人たちはクリントン氏に握手を求めたり写真を撮ったりもせずに、一体全体私たちが何を話し込んでいるのか興味津々だったそうです。
話の合間を見つけて先に立ち上がったのは私の方ですが、後からこのクリントン氏との「ゾンビ談義」のことをしても信じてもらえないと感じ、妻をクリントン氏に紹介がてら「ゾンビの話をしていたんだよ」と周りの人に聞こえるように言ったところ、クリントン氏が「本当の話だよ」と嬉しそうにフォローしてくれました。
ちなみに、この会話の際に、クリントン氏が紹介してくれたのが、Wade Davisという民族植物学者が書いた「The Serpent and the Rainbow」という書物で、これをベースに映画も作られているそうなので、興味のあるかたはどうぞ。
MBA
先週、元 Delta Airlines のCEOをしていた人と食事をしながらゆっくりと話す機会があったのですが、その際にMBAに関して興味深い会話ができたので紹介します。
私が、一度会社を経営した後にMBAを取得した話をしたところ、彼が興味深そうに「どうだった?」と聞くので、「ファイナンスとアカウンティングの授業は受ける価値があったけど、MBAそのものは大したことがないと思う」と正直に話したところ、嬉しそうに次の話をしてくれました。
彼がCEOだったころ、日本のある会社が(パナソニックのことだと思いますが、確認できなかったので、仮にP社と呼んでおきます)、エコノミークラスも含めた全席に映画が見ることができるインフライト・エンターテイメント・システム(IFS)を搭載することを提案して来たそうです。当時、IFSはファーストクラスとビジネスクラスには普及していましたが、エコノミークラスにまで提供する航空会社は存在しなかったそうです。
さっそく、彼の下で働くMBAに評価を依頼したところ、コストは高いし、機体も重くなる(その分、燃費が高くなる)ので、採用すべきではない、という数字がびっしりと詰まった綿密なレポートを提出して来たそうです。
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