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【Vol.472】冷泉彰彦のプリンストン通信『朝鮮半島外交における2つの留意点』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「無効とされた横断歩道は、横断歩道ではないのか?」  徳島県の警察本部は3月2日に、横断歩道の1箇所について、設置に必要な 手続きが行われたかどうか確認できず、無効の状態だったと発表したと報じら れています。具体的には、ある交差点に関して、交通規制をとりまとめた規制 集を確認したところ、北、南、東と現場に3本ある横断歩道が、規制集には北 側と南側の2本しか記載されていなかったそうです。  その後、県警が調査したところ、3本ある南側と東側の横断歩道については 設置手続きに必要な県公安委員会の1986年の決裁書類を確認できたが、北 側の1本に関するものは見つからなかったそうです。よく分からないのです が、県警という組織においては、「有効な横断歩道の記録リスト」とか、「交 差点の図面における横断歩道の設置表示」といった「原本」があれば、それが 横断歩道だというのではなく、「ここが横断歩道だ」という「決済書類」が必 要という内規があるようです。  例えばですが、出生届を出す際には「医師、助産師が作成した出生証明書」 や「母子手帳」などが必要です。これは架空の戸籍など不正行為を防ぐためで 当然の措置だと言えます。ですが、一旦戸籍に記載されたら、戸籍が原本にな るわけで、その子どもの法的手続きには、戸籍謄本や戸籍抄本で足りる、つま り母子手帳のコピーなどは必要ありません。  ですが、この徳島県の運用では「横断歩道が横断歩道であることを証明する には、決済書類がないといけない」のであって、「決済書類がない場合は、そ れは横断歩道ではない」というのです。  頭がクラクラするような妙な話ですが、とにかく警察というのは法律を根拠 に社会を安定させるのが仕事ですから、何につけても厳格、正確にやりたいと いう「心がけ」は悪いことではありません。  ですが、問題はこの「北側の一本の横断歩道」が「無効」されたことへの対 応です。何と、設置時点にさかのぼりおよそ30年間、横断歩道として取り扱 うことができないのだそうです。そこで、県警は過去5年間に同所で摘発した 車や原付きバイクの運転手32人の交通違反を取り消し、反則金計約30万円 を返納することになったと報じられています。  どうして5年しか遡れないのかというと、交通違反切符の保存期間が5年だ からだそうです。公文書の保管を面倒がってすぐに捨ててしまう役所の体質そ ものですが、それはともかく、過去5年間に、この横断歩道では32人が道路 交通法の「横断歩行者妨害」で摘発されていたのだそうです。  この32人について、横断歩道が無効となったことから、何と「全員の違反 を取り消し」、その上で、1人6000円から9000円の反則金を返金する のだそうです。また、ゴールド免許でなくなった人には、ゴールドの復活措置 をするそうです。  では、その「北側の横断歩道」は、正規の横断歩道にする必要のない場所な のかと言うと、驚くべきことにそうではなくて、やっぱり交通の安全確保のた めには横断歩道にする必要があるようです。そこで、県警は3月2日付で県公 安委員会から決裁を受け、問題の北側の横断歩道の設置手続きを完了させたそ うです。(続く)

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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