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§ ぶんぶくちゃいな § vol.456 §許成鋼「ChatGPTをめぐる中米AI競争」(後編) §

§ 中 国 万 華 鏡 § 之 ぶんぶくちゃいな
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ § 中 国 万 華 鏡 § 之 ぶんぶくちゃいな § vol.456 § 2023年3月11日発行 § 今週のトピック:経済学者許成鋼「ChatGPTをめぐる中米AI競争」(後編) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2月25日に配信した、米「ニューヨーク・タイムズ 中国語版」の袁莉・編集長が聞き役を務めるポッドキャスト「不明白播客」の後編をお送りする。ゲストは米スタンフォード大学の中国経済及制度研究センターの高級研究員、許成鋼教授。許教授は清華大学機械工学部の大学院を卒業する際に同学部で初めてコンピュータ補助設計についての論文を発表した。 この後編では、許教授は米OpenAIが発表したChatGPTの世界的ブームで、中国もAI研究開発に大きな意欲を見せる中、中国が本当にその競争にどこまで打って出れるのか、テクノロジー及び経済的な視点で語り、中国経済と先端テクノロジーの関係を論じている。 まずは、昨年はっきりと習近平が口にした「挙国体制」によるテクノロジー研究は可能なのか? どこまでいけるのか?についての許教授の解説からどうぞ。 ****************************** ◎ポッドキャスト「不明白播客」:経済学者許成鋼に訊く「ChatGPTに見る中米人工知能競争」(後編) ●挙国体制の「ブレークスルー」のその後 許:挙国体制で立ち向かえば勝てるだろうという人もいます。でも、これまでも挙国体制は採られてきた。それで成功しましたか? 半導体の分野では明らかに成功していないんです。 挙国体制の一例として、人工知能の分野には「北京智源人工知能研究院」(BAAI)という巨大企業が存在しています。 BAAIは、2021年に「世界で最強のAIモデルを開発した。強大なブレークスルーだ」と世界に向けて宣言しました。でもそこで、本来なら当時彼らがライバルとみなすべきはGPT−3.0だったのですが、彼らは「自分たちは『世界トップの』グーグルと競っている」と言ったのです。 一般に、AIモデルはパラメータが多ければ多いほど複雑になり、その能力も高くなるとされています。グーグルのパラメータは1.3兆、BAAIのモデル「悟道」――つまり「孫悟空の道」――は1.7兆のパラメータを採用していて、中国最大のスーパーコンピュータがそれをバックアップしている。なので彼らは、それを「世界一」だと言い、さらに「我われのモデルはチャットも可能で、どんな問題でも解決できる。素晴らしい能力を持つ汎用モデルだ」と述べました。 しかし、2021年以降誰かがそれを採用していることが伝わってこない。つまり、なんの影響も起こせていない。それからすでに2年経っているのに、なんの動きもない。そこが問題なんですよ。 それがさっき触れた挙国体制の構造なんです。 わたしはChatGPTに、敢えて「悟道」モデル、そしてBAAIについて尋ねてみました。返ってきた答えは、「とてもよく知っていますよ」でした(笑)。 続けて、「じゃあ、君と『悟道』モデルを比較して見せてよ」と言ったところ、「違いはわたしはOpenAIによって作られたこと。でもわたしたちは同じタイプで、どちらも世界最大のモデルです」という。直接「どっちが優れてるの?」と尋ねたら、「比べようがありません。それぞれに違いがあります」…結局直接の比較は拒絶されました(笑)。 「じゃあ、BAAIって知ってるか?」ときいてみたところ、「よく知ってますよ」という答えでした。「じゃあ、BAAIとOpenAIはどう違う?」と尋ねたら、「どちらも人工知能を研究開発している会社ですが、大きく違います。OpenAIは民間の一企業ですが、BAAIは挙国体制の国営企業です」(爆笑)。 さらに、「我われは私企業なので、ソフトウェアの製品開発を集中的に行っています。そうして生まれたのがわたしです。BAAIの関心範囲は非常に広く、なんでもやっています」と言うと、あとは黙ってしまいました。 ●著名人を集めてもイノベーションはできない

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