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【痛くない死に方 2023年第10号】コロナ飲み薬「ゾコーバ」が5日分で5.2万円! 無茶苦茶な値付の裏に

長尾和宏の「痛くない死に方」
  • 2023/03/11
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2023年 第10号 【長尾和宏の「痛くない死に方」】 長尾和宏です。配信が遅くなり申し訳ありません。 宮崎に出張していました。宮崎は一足先に春でした。誰ももうコートなんて着ていない。 会場で「メルマガを読んでいます」と声をかけてくださった方、ありがとうございました。 昨日3月11日は、日本尊厳死協会・九州支部大会の講演会でお話をしました。 タイトルは、「いま問われるリビングウイル 尊厳ある死を迎えるために何が必要か?」 3月11日、東日本大震災の日になぜぶつけたんだ? と最初は思いました。 ほかの日に変えたほうがいいんじゃないの? でも、あえてこの日を選んだのですと、言われました。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ あれから12年。干支が一回りした。12年経ってようやく、家に帰れる人がいる。 そして12年経ってもまだ、家に帰れない人がいる。 12年とは4380日。あの年に生まれた子が、12歳になっている。 先週、東北に住むある記者から電話があった。記者の知己のご夫婦のことを聞いた。 震災当時、その後夫婦には4歳の娘と生まれてまもない0歳の娘がいた。 4歳の娘を、あの日の津波で失ったという。絶望の中、生まれたばかりの二女を夫婦 で必死に育てた。亡くなった長女の幻を日々追いかけながら、泣きながら。 数年後。二女が乳離れすると、母親は少しずつ被災地復興のため「当事者」として声を 上げて、最愛の娘の死を、言葉として紡いでいった。 そうすることで、長女を失った悲しみを少しでも癒そうとしていたのだろう。 愛する家族を理不尽な形で失ったことを、忘れられない。忘れてはならない。 しかし、喪失という沼にはまったままでいては、人間は生きていくことはできない。 忘却することと、心の傷を癒していくことは、似て非なる行為である。 復興の活動を続けていくなかで母親は、傷を癒す言葉を獲得し、同じように家族を奪われ た仲間と共闘することができるようになり、時折、笑顔が見えるように。 娘の死を語ることを、「使命」と考えるようになった。語り続けることで、長女はいつも 傍にいてくれると。 ……一方で、夫婦の仲は次第に悪くなっていた。横のつながりが増え、支援活動に勤しむ妻 に夫は苛立ちを覚えていた。 妻はもう、娘を失ったことをなんとも思っていないのではないか。 なぜ笑えるのか。なぜ話せるのか。妻に対し、疑心暗鬼になっていったのかもしれない。 家庭の中でどんどん孤独になっていく夫は、次第に会社から帰ってくるなり早い時間から 酒を飲むようになった。無口な夫はさらに無口になっていった。 ある日、講演会活動から帰ってきた妻は、酩酊している夫を見て呆れ、叱った。 少しは二女の勉強を見てやってはくれないのか? 暇ならばなぜ、皿の一つも洗ってくれないのか? 仏壇の前でそんな酩酊した姿を見せたら死んだ娘に示しがつかないのではないか? と。 妻も今まで我慢していた。まったく前に進もうとしない夫に、彼女は彼女で苛立ちを覚えて

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  • 本邦初!100パーセント「死」のことについて語るメルマガ。2000人以上を看取った医師であり、日本尊厳死協会副理事として、日々「死」と向き合う医師と一緒に、死に方について考えませんか? 家族の死と向き合わなければならない人、大切な人が死んで、喪失感から抜け出せない人、今、どうしようもなく「死にたい」人も……あなたのこころに届くメッセージが満載です。
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