メルマガ読むならアプリが便利
アプリで開く

喘息治療の変遷 パート2その5

ドクター畑地の診察室
ドクター畑地の診察室183.2023.3.19. 現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。 世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信! https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php **************************** 喘息治療の変遷 パート2その5  何度も述べましたが、喘息治療の中心は吸入薬です。長い間、気管支拡張薬であるβ刺激薬(LABA)と吸入ステロイド(ICS)が一つになった合剤ICS/LABA が中心でしたが、数年前よりもう一つ選択肢が増えました。従来は、COPDにしか用いられていなかった抗コリン薬の吸入(LAMA)が喘息でも用いられるようになってきたわけです。  さて、このLAMA、前立腺肥大や緑内障の患者さんには使用しにくい点もありますが、喀痰の分泌量を減少させることができる気管支拡張薬であり、喘息患者さんによっては、LABAよりも効果があることがあります。特に、昔タバコを吸っていたことがある喘息患者さん、高齢者の喘息患者さん、肥満気味の喘息患者さんに有効と言われています。最初は、「スピリーバ」と言うLAMAが喘息に認可されたわけですので、喘息患者さんにLAMAを使おうと思うと、ICS/LABAに加えてスピリーバを処方しなければならず、2種類の吸入薬を吸入してもらわなければいけないことがネックでした。  前回も述べましたが、吸入薬は処方しても患者さんが吸入してくれないことが多く、1種類でも吸入してくれないのに、2種類も出すともっと吸入が難しくなります。ICSとLABAが別々の時代から、一緒にICS/LABAとして吸入できるようになって確実に吸入してくれる患者さんが増え、喘息のコントロールは改善しました。と、考えると、LAMAも一緒にして、3種類同時に吸入できる吸入薬が販売されれ ば良いなと考えるのは世の常です。そしてついにそう言った吸入薬が登場したわけです。単一の吸入器(Single Inhaler )に3種類の薬が入った治療(Triple Therapy )と言う意味のかしら文字をとり、3種類の吸入薬ICSとLABAとLAMAが一緒になったICS/LABA/LAMAを使用する治療をSITTと呼ぶこともあります。  例えば、血圧は下げ過ぎると色々な副作用が出ます。めまいやふらつき、ひどい時には頭へ行く血の巡りが悪くなり、脳梗塞を発症する可能性もあります。そのため、高血圧の治療はゆっくり血圧を下げる、すなわち(例外はありますが)いきなり血圧の薬を組み合わせて処方するようなことはしないのが普通です。しかしながら、気管支はどうでしょうか?どれだけ気管支を広げて悪いことは一つもありませんし、良いことばかりです。血圧の治療とは違い、喘息の治療は、特に症状が強い方の場合、いきなりSITT による治療を開始しても、なんら問題はない訳です。  喘息治療の大きな柱は、1.気管支を拡張すること 2.症状をとること 3.増悪を抑制することです。喘息治療において、気管支拡張薬の役割は1から3まで全てなわけですが、増悪を抑制するにはアレルギーによる炎症を抑制しないといけません。炎症を抑える効果は気管支拡張薬には少ないわけですので、その部分はどうしてもICSに依存するところでした。しかしながら、近年、この炎症を抑制する点で、効果的な生物学的製剤が上市されてきたので、次回以降はその話をしたいと思います。 ***************************** ドクター畑地の診察室183.2023.3.19号 毎週日曜日お昼に配信予定です。 次号は2023.3.26.です。 お問合せ、感想などはコチラまで zm.magumagu@gmail.com 畑地 治 https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 https ://mie-matsu-kokyuki.mars.bindcloud.jp/ https://www.facebook.com/mch.respiratory.center/ 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ***************************** ★お知らせ★ 好評発売中『ドクター畑地の診察室』バックナンバー 1ヶ月分を220円で購入できます。気になった号がある方はぜひチェックしてみてください! ◆2023年02月 https://www.mag2.com/archives/0001688238/2023/02 2023/02/26 喘息治療の変遷パート2その2 2023/02/19 本屋大賞 2023/02/12 喘息治療の変遷 パート2その1 1990年代の話 2023/02/05 喘息治療の変遷

この続きを見るには

この記事は約 NaN 分で読めます( NaN 文字 / 画像 NaN 枚)
これはバックナンバーです
  • シェアする
まぐまぐリーダーアプリ ダウンロードはこちら
  • ドクター畑地の診察室
  • 現役呼吸器内科、総合内科専門医のメルマガです。世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信!
  • 220円 / 月(税込)
  • 毎週 日曜日(年末年始を除く)