メルマガ読むならアプリが便利
アプリで開く

池田清彦のやせ我慢日記 vol.236 -「道具の脱人間化」と「人間の道具化」-

池田清彦のやせ我慢日記
池田清彦のやせ我慢日記 / 2023年3月24日発行 /Vol.236 INDEX 【1】やせ我慢日記~「道具の脱人間化」と「人間の道具化」~ 【2】生物学もの知り帖~恐竜の絶滅を加速した暗黒星雲とデカントラップ~ 【3】Q&A 【4】お知らせ 『「道具の脱人間化」と「人間の道具化」』  前回述べたように、川田順造は、17世紀初頭から1960年代までのフランスと日本の自己家畜化の様相を比較して次のように述べた。前者の指向性として、1.個人的な巧みさに依存せずに、誰がやっても同様な結果が出るように、道具や装置を工夫する。2.できるだけ人間以外のエネルギーを使って、より大きな結果を出したい。一方、後者の指向性として、1.機能が未分化の単純な道具を、人間の巧みさで多様に、そして有効に使いこなす。2.よりよい結果を得るために、人間の労力を惜しみなく注ぎ込む。  川田は、前者の指向性を「道具の脱人間化」、後者を「人間の道具化」と呼んでおり、これは彼我の自己家畜化を比較するうえで、極めて有効なコンセプトなので、いずれ詳細に論じたいが、ここでは、卑近な例として、食事を食べる時の道具について述べたい。  日本では多くの人は、二本の棒きれである箸を器用に使いこなし、これで、ほとんどの食事は事足りるが、ヨーロッパでは、カトラリー(スプーン、フォーク、ナイフなど)がないと埒が明かないことが多い。時々、会食などで、フランス料理が出されると、用途に応じて沢山のカトラリーが食卓に並んでいるが、分厚いステーキは別として、日常的に箸を使っている身としては、箸一膳あれば、間に合うだろうと思うことが多い。一つの道具を様々な場面で使い回すのではなく、用途に応じて、一番使いやすい道具を使う指向性が、ヨーロッパ人には身に付いているのだろう。  箸を使うのは、おおよそ、日本、中国、韓国、ベトナムなどの東アジアに限られ、東アジアとヨーロッパ圏以外の、アジアやアフリカなどでは、手を使って食べることが多い。これも、結構技術が必要で、「人間の道具化」の例と考えて差し支えない。従って、「道具の脱人間化」はヨーロッパから始まった自己家畜化の指向性であることは間違いない。

この続きを見るには

この記事は約 NaN 分で読めます( NaN 文字 / 画像 NaN 枚)
これはバックナンバーです
  • シェアする
まぐまぐリーダーアプリ ダウンロードはこちら
  • 池田清彦のやせ我慢日記
  • 右傾化とグローバリゼーションという矛盾した政策は、遠からず破綻することを、多くの人に知らせたい。 日本はこのままではヤバイんじゃなかろうか、と漠然と思っている人に、考える理路を提供したい。 なんとなく生きる元気が出ない人に、ほんの少しでも生きる楽しみを持ってもらいたい。 このメルマガを読めば、マスメディアの報道のウラに潜む、世間のからくりがわかります。 というわけでこのメルマガではさまざまな情報を発信して、楽しく生きるヒントを記していきたいと思っています。
  • 440円 / 月(税込)
  • 毎月 第2金曜日・第4金曜日(年末年始を除く)