WBCの優勝は、日本中を湧き立たせている。
自分がスポーツができないせいもあって、私はそんなに浮かれた気分になれない。
一つには、スポーツによる国威発揚というのは、落ち目になったり、つぶれかけたりする国の常とう手段だからだ。
東欧一の科学力や頭脳をもち、東欧でもっとも豊かな国だった東ドイツは、西ドイツに技術面や頭脳や工業製品で西ドイツに勝てなくなったとあきらめてから、スポーツ国家に変身して、オリンピックでは西ドイツを圧倒する金メダルをとった。
でも、それで西ドイツが、東に負けるなとスポーツでがんばった気配はあまり感じられなかった。オリンピックで負けても余裕綽々で、EUなるものを作り、ヨーロッパの覇者となったし、今でもドイツの車は強い。販売台数ではトヨタに負けても、高くても、あるいはユーロ高になっても売れる車を作り続けている。
そして東ドイツのほうは、国がなくなり、西ドイツに吸収合併された。
ソ連も同じだ。
ほとんどの分野でアメリカに勝てなくても、オリンピックのメダル数では圧倒していた。国威発揚になったかもしれないが、国力はまったくダメなままで、ソ連も消滅して、いくつもの国にわかれ、今の内戦(ソ連からみたらの話だが)状態を招いている。ソ連が残っていたら、ウクライナとロシアが戦争する必要がないことは確かだ。
韓国も、工業力や一人当たりのGDPで日本にとても勝てない頃は、スポーツでやたらに頑張った。今は、それで勝てなくても、映画でも論文数でもIT製品でも日本にぼろ勝ちしているので、スポーツで負けたら、大バッシングという熱狂は冷めている気がする。
中国は人口を考えたら、スポーツで本気を出せば、旧ソ連くらいのメダルを取れてもいいはずだが、やはりスポーツより勉強という価値観のほうを大切にして、工業製品の質や学術論文でアメリカに勝つくらいのレベルになっている。
日本は、工業製品でも一人当たりのGDPでも成長率でも賃金(物価高で少し上がったが、物価に追い付いていないという話もある)でもダメになって、明るいニュースがないから野球やスポーツにそれだけ熱狂するのだろう。
その間については、重要な治安問題であるルフィの事件も、あるいは、言論の自由の危機ともいえる高市問題も、そして、統一教会問題も、まったくテレビに無視される。自分たちの生活に直結する春闘だって、物価高と変わらないレベルの賃上げだったのに、これも丸無視だ。
マスク問題も全然相手にされない。
そういえば、日本でWBCをやっていたときは、観客席はマスクだらけだった。アメリカではそうでないことに言及した人はほとんどいない。
こういう時期に政治家は悪いことがし放題になるのだろう。唯一の救いは、この時期であれば高齢者が事故を起こしても騒ぎにならないことだ。
統計数字よりニュースで政治が変わる国では、まさにスポーツは政治に利用されると言っていいくらいだ。
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