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【Vol.475】冷泉彰彦のプリンストン通信『ウクライナ和平と各国政情』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「WBC優勝、100%喜べない理由」  日本のメディアは、WBCにおける全日本チームの優勝に湧いています。と 言いますか、この間、約一週間にわたって、ほぼこのニュース一色だと言える でしょう。その一方で、歓喜に湧く状況に水を差すようで恐縮ですが、このW BCについては、100%喜べないものを感じるのも事実です。2点お話をし たいと思います。  1つは、アメリカの不完全な参加ということです。主戦級の先発投手の多く が参加できず、参加した人も大きな制約(投球数、保険契約など)を受けての 参加でした。何よりも、ファンの盛り上がりにも欠けました。  2点目は、野球人気の広がりが壁にぶち当たっているという問題です。特 に、アジアにおいて、日本同様にプロ野球リーグが存在している台湾と韓国で は、ここ数年、深刻な野球離れが起きています。今回のWBCは、特にこの2 カ国における野球人気回復という意図もあったと思います。ですが、両チーム とも1次リーグを突破できないという最悪の結果に終わりました。  特に台湾の場合は、自国開催であったプールで勝ち抜けなかったのですから 深刻です。韓国の場合も、内容があまりにもお粗末でした。では、その他の欧 州各国などが野球の潜在市場として成長する気配を見せているのかというと、 それも手応えはありませんでした。  その一方で、優勝した日本チームにとっては、様々な希望を感じさせる「中 身のある勝利」であったと思います。全員の士気を高めるために、近代的な手 法を繰り出して成功させた、ダルビッシュ選手、大谷選手のリーダーシップ は、日本の野球文化を再生させる大きな一歩となりました。不振の村上選手を 信じ続けて復活させた栗山監督の姿勢も同様です。  ちょうど日本では選抜高校野球が開催されていますが、勝利インタビューな どで選手たちが、極めて冷静に技術論を語るなど、時代の変遷は明らかです。 この勢いで、全国の少年野球、高校野球から「昭和の暴君」のような指導者が 駆逐され、敗者に凱歌を聞かせたり、敗けた選手を追い詰めて泣かせたり、ま るで犯罪者のように丸坊主にしたりするような下らない旧弊を一掃すること で、日本の新しい野球カルチャーを育てていく時期に差し掛かっていると思い ます。そうした事も含めて、今回のWBCが新たな時代への希望になっている のではと思うのです。

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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