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喘息治療の変遷パート3その1

ドクター畑地の診察室
ドクター畑地の診察室185.2023.4.2. 現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。 世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信! https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ***************************** 喘息治療の変遷パート3その1  大上段に振りかぶると、我々医療従事者はなにを目指して患者さんの治療を行なっているのでしょうか。医療が進歩するに従い、目指すものが変化してきているので、皆様にも知っていただきたいと思います。少し前までの医療は、今ある患者さんの苦しみをとることに主眼が置かれていました。喘息治療ですと、今「息苦しい」と言う症状をとることに主眼が置かれていたわけです。  何度も述べましたが、喘息治療の中心は吸入薬です。特に最近は気管支拡張薬2種類と吸入ステロイドの3種類が入った3剤合剤が上市され、非常に効果的です。しかしながら、この吸入薬をきっちり吸入しても、4%から10%の一部の喘息患者さんには、「息苦しい」とか、「咳が続く」とか言うような症状が残り、日常生活に制約を受けています。    軽度の症状は、短時間作動性β刺激薬(SABA)を吸入することによりなんとかなりますが、我慢できる範囲を超えて喘息症状が悪化した時(喘息増悪と言います)は、どうしてもステロイドの点滴や内服に頼らざるを得ないわけです。ステロイド投与により患者さんの症状は改善しますが、当然ですが、糖尿病、骨粗鬆症など、色々なステロイドの副作用が起こってきます。この副作用は、毎日定期的にステロイドを使用しないで、悪化した時だけ使用する方でも、ステロイドを使用していない方に比べて、起こる確率が跳ね上がるわけです。現在の発作はなんとかなるが、その代償として、未来の健康が犠牲になってしまうわけです。  これからの医療はなにを目指すのか、今の症状をとることはもちろんですが、その患者さんの将来の健康もしっかり守らなければいけない、すなわち、将来を見据えた医療をしなければいけないわけです。喘息が増悪した時、経口あるいは点滴のステロイド薬を使用することは、患者さんの将来を見据えた医療とは言えません。また、難治性喘息で、経口ステロイドを定期的に内服されている方は、少しでもそのステロイド 薬を減量し、可能ならば中止することが必要です。増悪を減少させること、投与されているステロイド薬を減量することを目的に、難治性喘息に対して開発された薬剤が、バイオテクノロジーをもとに作られた高分子蛋白質である「生物学的製剤」と言われる薬剤です。  この「生物学的製剤」が初めて用いられたのは、クローン病や関節リウマチに対してですが、2002年のことです。それから遅れること4年、喘息に対して日本でも「ゾレア(薬品名オマリズマブ)」と言う薬剤が上市されました。このゾレア、今では喘息のみならず、蕁麻疹や花粉症にも用いられ、非常に効果が高いことが知られています。その後、次々と新しい生物学的製剤が上市され、現在では難治性喘息に対して5種類の生物学的製剤が使用可能で、患者さんの病態により使い分けています。  次の数週間で、喘息に対する生物学的製剤のお話をしたいと思います。  さて、新年度となりました。相変わらず忙しい日々を過ごしていますが、最近は読書のみならず、iPadでAmazonプライム・ビデオを見るのが日課になっています。お気に入りは「力の指輪」です。今まで読書した中で、一番好きな本をあげよと言われたら、文句なく、「指輪物語」をあげます。「ロードオブザリング」と言うタイトルで映画化されており、ご存知の方も多いと思います。「力の指輪」は、この「 指輪物語」の前の時代の話であり、「シルマリルの物語」などで語られている世界の話なのでしょうか。「指輪物語」を知らない人でも楽しめる内容ですが、知っていると登場人物が一部重なる部分もあり、さらに楽しめます。是非ご覧になり、憂いを帯びた世界観を堪能してみて下さいね。 ***************************** ドクター畑地の診察室185.2023.4.2号 毎週日曜日お昼に配信予定です。 次号は2023.4.9.です。 お問合せ、感想などはコチラまで zm.magumagu@gmail.com 畑地 治 https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 https ://mie-matsu-kokyuki.mars.bindcloud.jp/ https://www.facebook.com/mch.respiratory.center/ 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ***************************** ★お知らせ★ 好評発売中『ドクター畑地の診察室』バックナンバー 1ヶ月分を220円で購入できます。気になった号がある方はぜひチェックしてみてください!

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