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伏木悦郎のメルマガ『クルマの心』
第511号2023.3.14配信分
●日本史における事実。自動車の歴史は、実は古くて新しい
テクノロジー(技術の進歩)とともに生きてきた。長くクルマの
情報発進に関わってきたこともあるが、その進歩の過程を取材とい
う形を通じて間近に接することで知り得たことが、このメルマガに
つながっている。正直言って、何をどのように伝えれば良いのか、
悩み続けたこの10年という思いが募る。
ここ何年かは取材の現場から離れることが多くなって、切り口を
見出せなくなった感が強い。定期刊行物であることは承知している
のだが、考えがまとまらない日々が続いてきた。読者の皆さんには
迷惑をお掛けしたという済まない思いで一杯だが、いつも言うよう
に『生きているかぎり、諦めるつもりはない』の精神は健在だ。
焦点が絞れず悶々とする時間を重ねてきたが、考えてみれば悩む
のは当然かもしれない。21世紀も早四半世紀に迫ろうとしている今、
世界が大きく変化する予感がある。19世紀から20世紀への様変わり
を振り返れば、気に病むこともなさそうだ。1800年代の半ば過ぎま
で日本人は丁髷(チョンマゲ)を結っていた。
徳川幕藩体制の国家政策『鎖国』によって国を閉ざした260年の
歴史からすれば、開国からまだわずか155年。技術の進歩が西欧や
新興の米国の来航を容易にし、西洋文化を丸呑みしてここまで来た
ことを胸に刻む必要がある。
明治維新を契機とする日本国の世界史への参入は、そのまま東洋
と西洋の衝突につながり、鎖国時代には無縁だった対外戦に明け暮
れた。維新から現在までのほぼ半分は戦禍に塗れ、日清/日露から
日中戦争を挟む形で第一次/二次世界大戦を経験して敗戦/灰塵の
憂き目を見た。
日本の自動車の歴史は、事実上それ以後の話になる。どこを糸口
にしてもいいのだが、日本がサンフランシスコ講和条約に調印して
独立を回復して(1952年公布)71年になる。その3年後がトヨタの
初代クラウン(RS型)のデビュー年であり、この辺りから話を始
めるのが筋だろう。講和後再独立と私の年齢が重なる。単に偶然で
あるにせよ、自分に重ね合わせて語れることに奇妙な因縁を感じる。
いま正に、1886年の自動車発明以来の転機を迎えようとしている
実感がある。1955年を境目にすると、現在は自動車の歴史のほぼ中
間点になる。私としては、このままガソリンを始めとする原油由来
の燃料で走る内燃機関のクルマで行く方が理に適っていると思う。
71歳という年齢とも無縁ではないと思うのだが、世界のトレンドは
電気自動車(EV)に傾いている観がある。
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