【大工の世界】
「アガーーーーっ」
初日からやらかしてしまった。
思いっきり振り下ろしたハンマーがみつおの左手の親指を直撃したのである。
「おいっ、みつお何やってるか、早く持ってこいっ」
従姉妹の旦那さんは普段はとても優しいのだが、現場に出ると人が変わったように厳しかった。
痛い親指を何とかカバーしながらようやく型枠を作って持っていった。
「はーぁ? これはさんぎが逆だな、こっちの面に付けないとどうやって使うか!」
「あっ、すみませんやり直します」
「もういいよ、俺がやるからお前はあそこのベニヤ板を4枚運んできて」
「すみません…」
初めての大工仕事で気張った分空回りしてしまった。
初日の夜、従姉妹の家で食事をして帰ることになった。
「はい、お疲れさん、大変だっただろ、続きそうか?」
ビールで乾杯しながら優しく話しかけてくれた。
職場とは全然違う顔である。
「みっちゃん大丈夫ね?夜の仕事してたから昼間の仕事は大変じゃないの?」
従姉妹も一緒にビールを飲みながら話しかけてきた。
「そうですね、太陽の下で仕事するのは久しぶりですからね」
「お前は自衛隊にいたからこれくらいの仕事は大丈夫だろ」
「あはは、自衛隊で大工仕事はしませんよ」
昼間の仕事をした後に飲むビールは最高だった。
夜の商売をしながら飲むビールとは一味違うことを初めて知ったのだった。
この記事は約
NaN 分で読めます(
NaN 文字 / 画像
NaN
枚)