今問われる「賃上げ力」
長期にわたる低価格競争
先進国首位の内部留保率
ゼロ金利脱出で好展望へ
久しぶりに「春闘」という言葉が、活気をもって語られるようになった。連合による第一次集計(3月中旬)によると、平均賃上げ率は3.80%となり1993年以来で30年ぶりという。企業は長いこと、賃上げを抑えて内部留保を優先する政策をとってきた。それが、堅実経営と見なされてきたのだ。この通念が今や、180度ひっくり返されようとしている。
大企業は、競って大幅賃上げに走っている。この光景を見ると誰もが、これまでの30年間は何だったのかという思いにとらわれよう。ただ、歴史を「25年単位」で区切って見れば、日本の賃金政策が大転換して当然という構造変化が起こっていることに気づくであろう。これまでは、退職した高齢者や家庭にいる主婦の労働力化によって、必要な労働力を確保できた。現在はそれも払底して、いよいよ本格的な労働力不足の時代に入る。こうなると、従来の低賃金では企業存続が困難になる。厳しい時代を迎えるのだ。
激変する労働環境に対して、日本企業に支払い能力はあるのか、という問題が提起されよう。答えは、「ご心配なく」である。企業の内部留保=企業貯蓄は、対GDP比で約8%と先進国企業では米国の5%すら上回り抜群の高水準にある。つまり、少々の賃上げをしたところで「左前経営」になる心配はないのだ。安心して賃上げすべし、である。詳細については、後で取り上げたい。
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