第259号(2023年4月21日号)
『最後の調停官 島田久仁彦の無敵の交渉・コミュニケーション術』
はじめに:
いつもメルマガをお読みいただきありがとうございます。
新年度・新学年を皆さんはどう迎えられたでしょうか?
さて、今週号の内容ですが、まず【1】の
『無敵の交渉・コミュニケーション術』のコーナーでは、
今週も【Win-Winを真に叶える方法】についてお話しします。
先週号では、【Stay in the zone (千載一遇のチャンスに焦点を当てる】についてお話しいたしました。
自分が準備してきた内容やスキルを存分に発揮するためには、
交渉や話し合いにおいて“ここぞという瞬間”を掴まなくてはなりません。
でも、そのような機会が来ても、それに気づくことが出来なくなる障壁として
『過去に囚われる(悪い記憶に苛まれる)』というものが存在します。
今週号では【いかにして過去・悪い記憶から逃れて、千載一遇のチャンスをつかむことが出来るか】についてお話しします。
その注目の内容は、本編をお楽しみに♪
次に【2―国際情勢の裏側】ですが、今週も盛りだくさんな一週間でした。
一つ目は【G7のJapan week】です。
15日から16日には札幌でG7気候変動・エネルギー・環境大臣会合が開催され、
議長国日本からは西村経済産業省大臣と西村環境大臣が参加しました。
脱炭素、脱石炭、グリーントランスフォーメーションなどについては、他の参加国からの攻撃に遭ったようですが、
多くの成果も残した素晴らしい会議だったようです。
特に二酸化炭素偏重型の脱炭素から、メタンガスやHFCsなどほかの温暖化効果ガスの削減にもフォーカスを充て、
その国際的な取組の推進を謳ったのはよい方向性かと思います。
特に2035年までにG7で2013年比65%の排出削減を叶えるためには、
メタンガスのように短期で大きな効果が出る温暖化効果ガスに焦点を当てることは適切であると考えます。
2008年のG8環境大臣会合(神戸)で合意の取りまとめを行った身としては、
かつての同僚が見事に合意をまとめあげた姿に感動もしております。
軽井沢では外務大臣会合が行われ、ロシア・ウクライナ問題の早期解決、中国の台頭への対峙とインドとの協力強化の必要性、
岸田総理が推す【核なき世界の実現】にむけた広島アクションプランの内容などについて議論が深められました。
グローバル・サウスの国々を取り込みたいという意思と、世界のより一層の分断が印象付けられる結果となりましたが、
約一か月後に迫る広島サミットに向けて着々と基盤を固めた会議だったのではないかと印象を持っております。
2つ目は【スーダンの内戦】です。
政府と準軍事組織との間での停戦合意が崩れ、戦闘が激化しています。
市内での銃撃戦に留まらず、戦闘機による空爆まで行われる本格的な戦いに発展しています。
邦人の国外退避を進めるために、日本政府も自衛隊機をジブチに派遣・待機させる方針ですが、
今後の戦況によっては、ジブチまでの退避も容易ではない状況になるかと思われ、一刻を争う状況になっています。
(実際にドイツはドイツ国民の退避のための派遣を見送る決定をしています。)
スーダンの安定が損なわれることで、必然的に隣国エチオピア情勢もまた緊迫化し、
そして南スーダンとの微妙なバランスも崩れそうな様相を呈しています。
アフリカ東部のデリケートな和平バランスが崩れることになると、下手をするとドミノ的に地域の安定が崩れ、
歯止めの利かない混乱に陥ることも予想されます。
すでにいろいろな情報が入ってきていますが、状況を見守りつつ、介入に備えておきたいと思います。
3つ目は【動き出したグローバル・サウス】です。
ここでは特にブラジル・ルラ大統領の外交的な動きが中心です。
先日、アメリカの対ウクライナ戦略を非難し、
『アメリカは戦争を煽るようなことは今後避け、和平実現に向けた努力をせよ』と発言したり、
前には『ゼレンスキー大統領にも今回の戦争に対する責任はある』と厳しい口調で語ったりしています。
ウクライナからの反応は聞いていませんが、アメリカ政府とブラジル政府の非難合戦はエスカレーション傾向にあります。
そこに火に油を注ぐ行為に出たのがブラジルで、今週、ロシアのラブロフ外相を首都ブラジリアに迎え、
ロシアとの緊密な関係をアピールして見せました。
これは実はロシア・ブラジルの2国間関係に留まらず、グローバル・サウスに属する国々の傾向、
それは欧米と中国・ロとの間で等間隔の距離を保ち、それぞれの国益に沿った行動をとるという傾向です。
ウクライナ戦争の状況が膠着状態に陥る中、ブラジルやインドをはじめとする第3極がどのような動きをするのか、
非常に注目です。
(来月に開催されるトルコの大統領選挙も、エルドアン大統領の巻き返しもあり、拮抗しているようですし。)
そして何よりも中国が仲介したイランとサウジアラビア王国の“和解”が、
代理戦争となっていたイエメンの和平に近づきつつあるという成果も生んでいるようです。
サウジアラビア王国がフーシー派との協議を始め、ラマダン明けにさらに会合をする予定であるなど、
中東地域も固まりつつあります。
結束は緩いとされますが、確実にグローバル・サウスの勢力は強まり、かつ基盤も固まってきているように思われます。
4つ目は【ウクライナの戦況について】です。
ポーランドに続き、スロバキアがウクライナにミグ29を提供しました。
そしてついにアメリカが約束していたパトリオットミサイルが1対、ウクライナに配備されたようです。
これでウクライナの抗戦能力は上がると思われますが、ミグ29の提供は新たな緊張を招く恐れが高まります。
それはNATO諸国、特にアメリカが恐れる“ウクライナ軍による対ロ越境攻撃”の可能性です。
一方的に編入したウクライナ東南部4州に対するウクライナからの攻撃に対しては、抗戦地域であることから、
まだ少し“大目に見ている”感が漂っていますが(ロシアにもNATOにも)、NATO諸国から供与された武器、
特に戦闘機が対ロ越境攻撃に使われるようになってしまうと、ロシアからの苛烈な反撃は自明であり、
それは戦争のエスカレーション傾向を決定づけることとなります。
そうなると非常に長い冬が国際情勢に訪れ、戦火が他の地域にも飛び火する恐れが高まります。
4億ドル相当の対ウクライナ支援の行方が分からなくなっている事態に鑑みても、ちょっと不穏な空気が流れています。
そして5つ目は【水面下で動き出す中国の非軍事作戦】です。
これは各地域での紛争の仲裁に乗り出す外交作戦に加え、
台湾へのシンパシーが強い中南米地域にかける“台湾引き離しのための外交攻勢”です。
現在、台湾が“国交”を結んでいるのは13か国だったかと思いますが、
もしオセロの駒のようにパタパタとひっくり返されていくような事態になり、
台湾との国交を維持する国がなくなれば、それは自ら“台湾の国・政府としての地位の消滅”に繋がります。
詳しくは【2‐国際情勢の裏側】のコーナーで、他のポイントとも絡めながらお話いたします。
今回のメルマガも長くなりましたが、どうぞ最後までお付き合いくださいね。
それでは今週号、スタートします★
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