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抗がん剤治療による嘔吐

ドクター畑地の診察室
ドクター畑地の診察室188.2023.4.23. 現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。 世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信! https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ***************************** 抗がん剤治療による嘔吐  昔、30年以上前、当時は「シスプラチン」と言う抗がん剤が上市されて間もない頃です。シスプラチンが上市されるまでの、進行肺癌に対する治療成績は悲惨なもので、治療してもしなくてもほとんど生命予後に差は出ないような状況でした。ようやく上市された、待望の肺癌に対して少しは効果がある抗がん剤が「シスプラチン」でした。しかしながらこの「シスプラチン」ありとあらゆる抗がん剤の中で最も催吐作用 がある抗がん剤であり、投与したら、向こう数日間は、嘔吐のため、1日に数十回はトイレと入院室の間を往復しなければいけない状況になったものです。そんな患者さんを見ると、こんな治療をした方が返って体が悪くなってしまうのではないかと考えたものです。  そんな状況を先ず、「グラニセトロン」「オンダンセトロン」と言う制吐剤が激変させました。この2剤は、抗がん剤を点滴した直後に起こってくる嘔吐を抑制する効果が極めて高く、ステロイドと組み合わせて投与することにより、少なくとも点滴初日の吐き気は起こらなくなりました。  しかしながら、まだ十分とは言えませんでした。点滴翌日から、「なんとなく気分が悪く食欲がない」と言うような状況がしばらく続くわけです。このような嘔気を「遅発性嘔気」と言います。この嘔気に対しては、ステロイドがある程度有効でしたが、それでもムカつきが起こったものです。ところが、十数年前、「アプレピタント」と言う薬剤が販売されて、この状況は改善します。上記薬剤と、ステロイドと組み合わせることにより、ほとんど通常と変わらない(便秘、たまに吃逆は起こりますが)生活を送りながら抗がん剤の点滴が可能となったわけです。  現在では、さらに有効な「パロノセトロン」「ネツピタント」と言う薬剤が上市された上、抗精神薬の「オランザピン」と言う薬剤を加えて、初回治療の際、抗がん剤を点滴して気分が悪くなる方はほとんどいなくなったと思います。  さて、今年の本屋大賞は僕の予想に反して「汝、星のごとく」でした。(この手の恋愛小説が流行りなのでしょうか)確かに素晴らしい小説ではありますが、自分の好みではありません。記憶に間違いがなければ、主人公が胃癌になり、抗がん剤治療の副作用を嫌がって治療を受けない場面があります。少なくとも元気な若者の初回治療での抗がん剤治療はそれほど苦しくないと思います。苦しいと感じるなら、それは「主治医のマネージメントが下手なんじゃない」と思ってしまいますし、実際には嘔気などが出現することはほぼないと思います。少し、今の医療の実情と離れており、作者のイメージだけで書かれているようで残念です。  第2位となった「ラプカは静かに弓を持つ」は、自分の好みで、このようなジャンルの小説が今後もっと読まれるようになればと感じています。第6位になった「君のクイズ」は自分の本命でしたが、候補作品の中で1番面白い作品だと思っています。皆さま、是非ご一読くださいね。 ***************************** ドクター畑地の診察室188.2023.4.23号 毎週日曜日お昼に配信予定です。 次号は2023.4.30.です。 お問合せ、感想などはコチラまで zm.magumagu@gmail.com 畑地 治 https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 https ://mie-matsu-kokyuki.mars.bindcloud.jp/ https://www.facebook.com/mch.respiratory.center/ 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ***************************** ★お知らせ★ 好評発売中『ドクター畑地の診察室』バックナンバー 1ヶ月分を220円で購入できます。気になった号がある方はぜひチェックしてみてください! ◆2023年03月 https://www.mag2.com/archives/0001688238/2023/03 2023/03/26 ちょっと休憩 2023/03/19 喘息治療の変遷 パート5 2023/03/12 喘息治療の変遷 パート4

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