【真夜中の訪問者】
「いらっしゃいませ〜」
「生いっちょう」
「焼き鳥5本とほうれん草バターお願いします」
「予約の席は奥の方になりまーす」
そこはみつおの家の近くの居酒屋である。
ひょんなことから、居酒屋でバイトをするようになったのだった。
みつおは夜の世界から抜け出すために、あえて昼間の仕事に転向したのだが、結局は飲みに行く機会が増え、今まで以上に飲み歩いている日々が続いていたため、お金が回らなくなっていた。
今までは実家で暮らしていたのだが、今は自分で家賃を払わなければならない。
今までかからなかった家賃と光熱費の出費が痛かった。
昼間の仕事だと終わってから時間が長いためついつい飲みに行ってしまうのである。
そこでみつおは決心した。
「そうだ、アルバイトをしよう!」
昼間の仕事が終わってからできるバイトを探していたら、何と家の近くの居酒屋が募集していたのである。
そこは夜の9時から夜中の1時までのバイトだったのでちょうど都合がよかったのである。
仕事が終わって、帰ってシャワーを浴びてから出勤しても充分に間に合う時間帯である。
いつも飲みに行ってしまうと夜中の2時まで飲んでしまう日々が続いていたので、それよりはバイトをした方がお金も使わないし、それどころかバイト代も入ってくるので、2倍の収入が増える気分だった。
「お前大丈夫か?大工の仕事と居酒屋の掛け持ちで身体もつのか?」
「大丈夫です。飲みに行くよりは楽ですよ(笑)」
「ま、いいけど無理しないようにな」
親方は心配してくれたが、止めることはしなかった。
支払いが増えたのは家賃や光熱費だけではなかった。何と生まれて初めて車を購入したのである。もちろん中古車だが、40万円くらいでいいのを見つけたので、ローンで購入したのである。
だからどうしてもバイトをして収入を増やす必要性があったのである。
最近は飲み過ぎているなと自分でも感じていたので、大きな決断をしたのだった。
昼間の仕事は遅くても7時には帰れたので、そこからお風呂に入っても十分に間に合う時間帯だった。
アルバイトが夜中の1時まで、家に帰ってすぐに寝れば5時間くらいは睡眠時間が取れる計算だった。
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