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週刊Life is beautiful 2023年4月25日号:ETHGlobal Tokyo ハッカソン

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん ETHGlobal Tokyo ハッカソン 先々週、1週間ほど日本に行っていました。前半は、対談+いくつかのミーティング(父親とのものも含む)で充実した時間を過ごしましたが、最後の三日間は、「ETHGlobal Tokyo」というタイトルのハッカソンでした。ETHGlobalは、Ethereum関連の開発者コミュニティを盛り上げるために、イベント(主にハッカソン)を世界中で開催している団体です。 日本で開催されるのは初めて、ということでしたが、日本からの参加者は約4割、アジア全部で約7割で、プレゼン等は基本的に英語で行われるという、完全にグローバルなイベントでした。審査員へのピッチ(作品のプレゼン)も全て英語で行わなければならなかったため、日本人だけで構成したチームは苦労しただろうと思います。 参加した日本のエンジニアたちには良い刺激になったと思います。このメルマガでは何度も指摘していますが、これからは「英語が使えるエンジニア」になることが必須です。(英語が使えないために)日本でしか仕事ができないエンジニアは、グローバルな人材市場で戦える「英語が使えるエンジニア」と比べて、大きなハンデを背負うことになります。 英語が使えないと、得られる情報も少ないし、発信しても見てくれる人は限定されています。グローバルな人材市場であれば、15万ドル(2000万円超)の年収が得られる人が、日本だと700〜800万円しか得られない、というのが現状です。 ちなみに、参加してから気が付いたのですが、ETHGlobalの開催するハッカソンは、「自社の新しい技術を広めたい会社が、賞金を出すことにより、賞金狙いの開発者たちが自分達の上にアプリケーションを作る」という状況を作り出す点が特徴のハッカソンです。それゆえ、賞金総額は$350,000(約5,500万円)と巨額で、世界中から開発者たちが集まったのです。 つまり、このハッカソンで賞金を得るためには、「数多くいるスポンサーの中から一社か二社を選び、そこの技術を使ったアプリ(それも賞金を出す会社が喜びそうなアプリ)を36時間で作る」必要があります。 スポンサーのリストと彼らが提供しているテクノロジーの内容は何週間も前から公表されているため、それらを前もって勉強しておき、「どのテクノロジーを使ってアプリを作るべきか」ぐらいの目安を作った上でハッカソンに臨むべきなのです。 しかし、そんなことを準備を全くしてこなかった私たち(私+シンギュラリティソサエティから三人のメンバー)は、結局「作りたいものを作る」しかなく、以前から私が作りたいと考えていた、(OpenSeaなどの)NFTの取引所を介さずに、ユーザー間で直接取引が出来るNFTと、その取引を可能にするウェブサービスを作ることにしました。 現在、NFTはERC271という業界標準のプロトコルを活用して実装・取引されていますが、これには致命的な欠点が3つあります。 一つ目は、取引のためには「信頼できる第三者」が必要な点です。OpenSeaなどのNFTの取引所がその役割を果たしていますが、Web3のビジョンの要である「Decentralized」「Trustress」とは相反する仕組みです。 二つ目は、ERC271に含まれている setApproveForAll という関数です。OpenSeaなどの取引所でNFTを販売する際には、この関数を呼ぶ必要がありますが、これは「あなたに私の持っているNFTを転送する権限を与えます」という非常に危険な関数です。(上に書いた通り)取引所が全面的に信頼出来るという前提だからこそ、こんな関数が存在するのですが、この関数の存在が、NFTが毎日のように大量に盗まれる一番の原因になっています。悪質なサイトは、「無料のNFTをもらえる」などの甘い言葉で、ユーザーにWalletを接続させ、setApproveForAllを呼ばせることにより、ユーザーが保有するNFTを根こそぎ盗んでしまうのです。 三つ目の問題は、クリエーター向けのロイヤリティです。NFTは、2次販売以降もクリエーターにロイヤリティが入る点が、既存のアートビジネスと比べて優れているという謳い文句で広まりましたが、実際にはこのロイヤリティの分配の仕組みはERC271の中にはなく、それぞれのNFTの取引所が、クリエーター向けのサービスとして提供しているだけのものです。 なので、クリエーター側から、「このNFTは、10%のロイヤリティを支払う交換所でしか取引してはいけない」などと指定することも強制することも不可能で、すべては取引所のコントロール化にあります。OpenSeaは、当初、クリエーターによりそった形のロイヤリティを支払っていましたが、競合との間でロイヤリティの値下げ合戦が起こった結果、クリエーター向けのロイヤリティは非常に低いもの(0〜0.5%)になってしまいました。 この問題を根本から解決するために、私はERC271P2Pというプロトコルを4ヶ月ほど前に提案しました。そのプロトコルは、 取引には信頼出来る第三者が不要 クリエーターのロイヤリティは、スマートコントラクトで強制的に徴収 取引手数料は無料 という三つの特徴を持ち、これを業界標準にしたいとオープンソース化をしました。 今回は、このプロトコルを実装するNFTを作っただけでなく、それを活用してユーザー間が交換所を介さずに直接取引を可能にするウェブサイトを作ることにしました。NFTのベースは元々あったので、実際にゼロから作る必要があるのはウェブサイトだけであり、36時間あれば十分に作れると私は考えていました。 実際に作り始めると、メンバーそれぞれの働き方が違うため、結構苦労しました。スマートコントラクトを担当した私は、いつものように最初の20%ぐらいの時間で一気に作り上げ、金曜の夜にはウェブサイトとのインテグレーションが出来るように準備をしておきましたが、実際にウェブサイトが形になり始めたのは土曜日の夜でした。 何事も前倒しで進めなければ気が済まない私には、結構辛い体験でした。特に困ったのが、他のメンバーが私と違って、成果を小出しにせずに一気に作ろうとするため、手が空いている私が手伝うことが難しくなってしまった点です。最後にはなんとか辻褄(つじつま)を合わせ、日曜朝9時の締め切りにはなんとか間に合わせることが出来ましたが、ハラハラドキドキの体験でした。 日曜日の9時からは、審査員に向けたプレゼンを行いましたが、上に書いたように「スポンサー受け」のする作品を作らなかった私たちのチームは、とても不利で結果的には、テスト用に Mumbai というブロックチェーンを使ったことを(Mumbaiを提供している)Polygonから少しだけ評価されるという結果に終わりました。 ちなみに、会場では、私が参加していることに気が付いた人たち十数人に挨拶されましたが、誰もが「中島さんがハッカーとして参加してるんですか!」と驚いていたのが印象でした。シンギュラリティ・ソサエティの仲間によれは、「日本は偉い人はコードを書かない」からだそうです。 また、多くに人の挨拶が「Voicyをいつも聞いてます」だったのは驚きでした。Voicyを始めたのは最近だし、週に一度ぐらいしか配信していないにも関わらず、私との接点がVoicyだと宣言する人の割合が多いのは驚きです。私の Voicy のフォロワーの数は、現時点で1万4千人ぐらいですが、そのぐらいの数でこの反応ということは、もっと頑張って5万人ぐらいに増やしたら、一体どうなるのでしょうか?Voicyに投資している私としては、喜ばしい限りです。 EVシフトの地政学 先日、米国政府が法律変更に伴う、タックスクレジット(税金の割引)を受け取れる対象となる電気自動車を発表しました(Federal Tax Credits for Plug-in Electric and Fuel Cell Electric Vehicles Purchased in 2023 or After)。金額は最大で$7,500(約100万円)と大きいので、売上に対する影響は多大です。対象となるのは、 Cadillac: LYRIQ Chevrolet: Blazer, Bolt, Bolt EUV, Equinox, Silverado Chrysler: Pacifica PHEV Ford: E-Transit, Escape Plug-in Hybrid, F-150 Lightning, Mustang Mach-E Jeep: Grand Cherokee PHEV 4xe, Wrangler PHEV 4xe Lincoln: Aviator Grand Touring, Corsair Grand Touring Tesla: Model 3, Model Y

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