■世界の雑談と日本の雑談
日本では、商談などの前に雑談を交わす。だが、それは日本独特の
習慣だ。世界のビジネスシーンで一流のビジネスマンが交わすの
は、日本的な雑談ではない。「dialogue」に近いものだ。
ダイアログとは「対話」という意味だ。単なる情報のやりとりでな
く、話す側と聞く側がお互いに理解を深めながら、行動や意識を変
化させるような創造的コミュニケーションを目指す会話だ。
彼らは、明確な意図を持って目の前の相手と向き合っている。具体
的には、状況を確認する、情報を伝える、情報を得る、信用を作
る、意思を決めるといった意図だ。
そのために、雑談を武器としてフル活用している。そうすること
で、仕事のパフォーマンスを上げ、成果を出すことを強く意識して
いるのだ。
日本では、本題に入る前の雰囲気作りを重視して雑談を交わしてい
るが、大事なことはその雑談で成果を出すことだ。そんな戦略的視
点が、日本の雑談からはスッポリと抜け落ちているのだ。
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多くの日本人ビジネスマンは「雑談が上手い人=おしゃべりが上手
で、面白い話をする人」と考えている。だが、ビジネスの現場で
はそれだけでは不十分だ。
世界基準のビジネスの最前線では、「明確な意図を持ち、そこに向
かって深みのある会話ができる人」こそが「雑談の上手い人」とさ
れている。
これは、小手先のコミュニケーションスキルの問題ではない。「何
のための雑談か」「目の前の相手にどうなって欲しいか」といった
本質を理解し、その場に相応しい雑談をするべきだ。
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多くの日本人は気づいていないが、日常的な会話には「定番のフレ
ーズ」が多い。外国人の目から見ると、3分の1は必要ないと思え
るような決まりきった言い回しが多い。
たとえば、今日の天気や互いの体調の確認などだ。どれも向かい合
えばすぐわかる。日本人の雑談は、社交辞令と演技、そして決まり
文句の3つで構成されているのだ。
それは、日本人の「奥ゆかしさ」とか「謙虚さ」の表れかも知れな
い。だが、外国人の目には「日本人は本音を言わない」とか「何を
考えているのかわからない」と映っているのだ。
★
ポーランドのビジネスマンに「How are you?」と聞けば、定形パ
ターンでなく本質的答えが返ってくる。「調子いいですよ。出世し
ました」など、自己開示をしながら中身のある会話がはじまる。
自己開示とは、プライベートな情報を含めて、自分の思いや考え
方などを相手に素直に伝えることだ。自己開示をすると、相手に
「自分がどんな人物なのか?」を知ってもらえる。
だから、警戒心を解きやすくなる。お互いの心理的な距離を縮める
ことができる。自然と相手も自己開示しやすい雰囲気ができるた
め、一歩踏み込んだ関係性を生み出すことにつながる。
★
コミュニケーションにおける自己開示は、信頼関係を築くために欠
かせない。ところが、日本の雑談では定番のフレーズの後ろに隠れ
ているため自己開示をせずに済んでしまう。
一方、ヨーロッパの国々には、決まったフレーズがない。だから
「その人」に特化した雑談になる。天気の話から始まっても「週末
には何をしているのか」といったプライベートの話に発展する。
こうして、すぐに自己開示して自分のことを知ってもらおうとす
る。また、相手が自己開示しやすい質問をするという特徴もある。
こうして、互いのアイデンティティを表現する。
自己開示をすれば、自分がプライドを持てる話をすることになる。
定型文でなくその人に特化した雑談をすることで、相手との距離を
縮めことを意図しているのだ。
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