第743回　脱ドル化の流れがコントロール不能になるようなことはあるのか？、マイヤーが語るこれから起こること

…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━… 第743回　脱ドル化の流れがコントロール不能になるようなことはあるのか？、マイヤーが語るこれから起こること …━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━… ▼今回の記事 今回の記事は前回の続きである。いまのところは大丈夫だとは思うが、脱ドル化がはからずも急速に進展してしまう可能性を考察する。その可能性がないわけではない。次に、プレヤーレンの最新コンタクト記録にあるこれから起こることを紹介する。 ▼脱ドル化が進展してしまう可能性 それでは早速今回のメインテーマを書く。脱ドル化がはからずも進展してしまう可能性について考察する。今回は前回の記事の続きである。 前回の記事にも書いたように、国際決済通貨としての脱ドル化が進展しているさまざまな兆候がすでにある。最近のものを列挙すると以下のようになる。 ●脱ドルの加速を示す事例 1）「ユニバーサル・モネタリーユニット」の発表 「国際通貨基金（IMF）」の「春季総会2023」において、「デジタル通貨金融オーソリティー（DCMA）」は、参加中央銀行の通貨主権を強化し、IMFが提案した暗号資産政策勧告に準拠する「世界中央銀行デジタル通貨（CBDC）」を正式に発表した。ちなみに「DCMA」は、「IMF」を始め、主要国の政府や世界の主要銀行が出資している民間組織である。「中央銀行デジタル通貨（CBDC）」の導入に向けて設立された。 この新デジタル通貨は「ユニバーサル・モネタリーユニット Universal Monetary Unit（UMU）」と呼ばれ、法的に貨幣であり、あらゆる法定通貨決済で取引できる。「CBDC」のように機能して、国際銀行システムの機能を保護する。 2）BRICs国際決済通貨の導入 ロシア国家議会のアレクサンドル・ババコフ副議長は3月30日、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興経済圏であるBRICSが「新しい通貨」の開発に取り組んでおり、ダーバンで開催予定の同組織のサミットで発表する予定であると述べた。 ババコフによると、自国通貨による決済への移行は最初のステップだという。その次は、近い将来、デジタル通貨やその他の形態の根本的に新しい通貨の流通を提供することだとしている。ババコフは、「「BRICs（首脳会議）」では、このプロジェクトを実現する準備が発表されると思うが、そのような作業は進行中だ」と、「開発と成長のためのロシア・インド戦略的パートナーシップビジネスフォーラム」で述べた。 またババコフは、BRICs内の単一決済通貨は金の価値だけでなく、「他の製品群、希土類元素、土壌 」にも固定されると述べた。 3）BRICs諸国間の決済で自国通貨を使用 BRICsのうち中国とブラジルの2カ国は、「自国通貨で取引することで合意」した。 中国の人民元の世界的な普及が加速している。この傾向は、米ドルへの依存度が低く、貿易の拡大に寄与する、より強靭な国際通貨システムの構築に役立つとと見られている。 この合意により、中国とブラジルは、ドルを介さず、人民元とレアルを交換したり、逆にレアルと人民元を交換したりして、大規模な貿易と金融取引を直接行うことが可能になる。 4）ASEANが米ドル依存引き下げを協議 3月28日、インドネシアでASEAN財務大臣・中央銀行総裁会議が開催された。金融取引における米ドル、ユーロ、円、英ポンドへの依存度を下げ、自国通貨での決済に移行するための議論が最重要議題となった。 会議では、地域通貨取引（LCT）スキームを通じて、主要通貨への依存度を下げる取り組みについて議論された。これは、すでにASEAN加盟国間で実施され始めている現地通貨決済（LCS）スキームの延長線上にあるものである。 5）サウジアラビアの「上海協力機構」の対話パートナー入りと中国向け原油の人民元決済 サウジアラビアは、「ペトロダラー」に大きな影響を与える動きとして、「上海協力機構」の対話パートナーになることに合意した。 国営サウジアラビア通信によると、サウジアラビア内閣は、サルマン・ビン・アブドゥルアジーズ国王が主宰する会議で、中国、ロシア、インド、パキスタン、その他中央アジア4カ国を正式メンバーとする政治・安全・貿易同盟である「上海協力機構」においてリヤドに対話パートナーの地位を付与する覚書を承認した。これと同じタイミングで、サウジアラビアは中国向け原油の人民元決済をスタートした。「ペトロドル」終焉の第一歩となるかもしれない。