小林よしのりライジング 【号外】「小林よしのり×有田芳生 対談『統一協会の闇special』（3/3）」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 小林よしのりライジング ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 号外/ 2023年4月28日発行 / （3/3） ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【小林よしのり×有田芳生　特別対談】 「オドレら正気か？『統一協会の闇special』」PART3 ■カルト宗教から身を守る方法はあるのか？ 泉美：はい。それではこれより第2部をはじめます。2部は質疑応答からいきますかね？ 小林：そうだね。 泉美：ではですね、1部を踏まえつつ、『統一協会の闇』を読まれた方、読んでない方も、ぜひゲストの有田さんにご質問があれば挙手をお願いします。じゃあ一番最初に手を挙げてくださったかた。 質問（男性）：今回の有田さんと小林さんとの対談で、一番引っかかったのが、ステルス侵略です。これは武力なき侵略でもありますけど、これに対して例えば僕個人、あるいは僕の周囲で、統一協会あるいは統一協会の信者が同じようなことを繰り返したり、第2、第3の統一協会が活動したときに、どうやって自分の身を、あるいは周囲の知人が洗脳されたり引っかかっちゃったときに守ればいいのか。どうやって民間人がカルトに対して民間防衛をすればいいのか。みなさんだったらどうするのかを聞かせてもらえますか。 有田：大学レベルでいうと、1964年に早稲田大学で原理研究会っていうのができました。CARPって言うんですけれども、60年代に統一教会の学生組織として成立して、今もあるんですよ。ですから大学に入学する学生たちに対して、たとえば東北大学、大阪大学、青山学院大学など、これまで統一教会の拠点になってきた大学を中心にして注意しなさいよとは言っている。 こういう集まりやっているけれど、これは統一教会、原理研究会だからと入学式などでチラシを配ったり、休みに入る前に、休みの後は人との関係が切れちゃうんで注意しなさいということは、定期的に今も行われているんです。もう30年近くやっていると思う。学生さんの場合はそういう注意があるから、わかる人はわかってる。 でも、統一教会は学生だけではなくて多くの人たち、若者たちが巻き込まれていくんです。やり方はもう基本的に一緒なんですよ。今、CARP、全国大学連合原理研究会は、SDGsを勉強しましょうという形をとったりと、関心ある若者にちょっと行ってみようかと思わせる。 オウムだってね、オウムなんて言わないですよ。統一教会だって統一教会って言わない。CARPなんていう言い方をしている。オウムだったら、大学でインドカレー研究会みたいな、インドカレーを一緒に食べて勉強しましょうっていうとこから引き込んでいく。いろんな手で統一教会だとかオウムだとか言わずに接近してくる。 信者は基本的にみんな真面目でいい人なんですよ。だから熱心に接触してくる。昔は、街頭で手相を無料で見ますよというようなことを全国各地でやっていた。あるいは若者を狙って街頭アンケートなどもやっていたんです。その目的は全て、名前と住所を聞き出すことなんですよ。 そこから「あなたの関心あることを、ビデオセンターに来て勉強しませんか？」って言って、引っ張っていくんですよ。それでビデオを一緒に見るわけ。霊感的なことに関心がある人には八つ墓村を見せて、それで「先祖の因縁ってのはあるんですよ」っていうところから引き込んでいこうとする。あるいはベン・ハーなんかを見せたりと、その人の関心に応じていろんな関係を作っていって、そして「これは宗教ですか？」っていう質問しても「いや、宗教じゃありませんよ」って言うのが統一教会なんですよ。宗教なんだけども、そういうものではないと言う。 ちょっと怪しいなと思って、行かなくなると、もう名前と住所を知ってるもんだから、アパートに夜帰るとドアの前にケーキと丁寧な手紙が入っていて、あなたが最近来てくれないので、残念で悲しくてたまりません、みたいなことを書くんですよ。そうすると、人のいい人は、そこで行っちゃうんです。そうするとまた引きずり込まれていく。それが基本的なパターンなの。 山上徹也のお母さんは、今年71になるのだけれども、1991年に信者になったんです。夫は32歳のときに自殺したんですよ。3人子供がいて、長男、そして妹さんがいる。で、その3人の兄弟の長男は、小児がんで苦しんでいた。手術をして右目が見えなくなる。夫は自殺、長男は難病、そして山上徹也。彼も家庭が崩壊したから、兄を保険金の受取人の受取人にして自殺をはかったんです。 そういうのに対して、統一教会と言わずに親切に近づいてきた人が「何か悩みありませんか？」って聞かれたら、悩みはあるわけですよ。人間、誰だってあるわけ。だからそこで「あなたの夫が32で亡くなったのには原因があるんですよ」っていう言い方をする。人間ってのはいくら努力したって、それは5％なんだ。95％は運なんだというような言い方でやって来る。だけどみんな悩みを抱えてるから、じゃどうすればいいんですか？って聞いたらしめたもんなんです。「それを解決する道はあるんですよ」と迫ってくる。 勧誘にはいろんなパターンがあるんだけれども、基本的には逃げること。そして人に相談すること。こういう人が来たけれどと。つまり彼らはビデオセンターに連れて行くときにも、これはあなたの人生にとって大事なことだから、人に相談しちゃいけませんよっていうことをもうしつこく言うんです。だから真面目な人たちは相談しない。相談しないと巻き込まれていく。これはもう客観的にそういう成果がある。 だから渋谷とか浜松町でもいいんだけども、寂しそうにうつむいて歩いてる人を狙うんですって。これは、それやってる人たちから聞いたんだけど、うつむき加減に寂しそうに歩いてる人を狙う。だから、地方から出てきて友達もいないとか、そういう人に狙いを定める。で、100人に声をかけると1人は引っかかる。そこから段々段々深みに入れさせられる。とにかく何か気になったら人に相談することなんです。何人もの友達にというのが、僕からの回答です。 ■統一協会をやっつけるためなら誰とでも組む 小林：やっぱり人って、最初は純粋ですよね。そんなに世の中に悪いやつが多いとワシは思ってない。どこかで少しずつ騙されたり、色々あったり、経験していくわけなんだけど、本当に難しいよね。最初に純粋だったら仕方がないもんね。まず邪悪から始まるのは、わしぐらいしかいないだろう。やっぱり人は邪悪な面とか、そういう部分を持っておかないと。それを持っていて、人間のバランスは本当は取れてるわけじゃん。 昔ね、スタートレックのドラマの中で、全く善良なカーク船長と、全く邪悪なカーク船長とひとりの人間が二つにわかれてしまう話があったんだよ。そして結局どういうふうに終わるかというと、やっぱり人格として統合しないと敵の宇宙人とかには勝てないんだよ。これはうまいことできてるなと、わしはそれを見て思ったんだよね。結局、人って、自分の中の邪悪な感覚と善人の感覚、二つのバランスが両方とも必要なんだよね。