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ゴールデンウィーク

ドクター畑地の診察室
ドクター畑地の診察室190.2023.5.7. 現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。 世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信! https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ***************************** ゴールデンウィーク  ゴールデンウィークになると、私たちにとっては楽しみなことばかりですが、患者さんにとっては少し不利なことが続くと思います。例えば、ゴールデンウィーク中は、一般の検査はできるものの、特殊な検査ができなくなってしまいます。  肺がんの患者さんを思い浮かべてください。早期肺がんであるならば、手術をすれば問題ないわけですが、いろいろなところに転移がある進行した肺がんの場合は、手術不能です。そのような肺がん患者さんの場合、肺がん部の組織をとって遺伝子検査を行い、治療方針を決定するわけですが、多くの病院では、この遺伝子検査は外注(院外の検査会社に提出)になってしまいます。そのため、結果が出るまで、どれだけ急 いでも10日以上の期間がかかるわけですが、ゴールデンウィークになると検査ができなくなってしまうため、実際に診断して治療に入るまで、20日以上期間がかかってしまうこともざらにあります。余裕がある患者さんであるならば、その程度は待つことができますが、生命の危機に瀕した状況の患者さんにおいては、待つ余裕はありません。  そんな時、早く治療したくてもできないジレンマになり、患者さんの状態は毎日悪くなる、しかし治療をしたくてもできないもどかしい気分になります。松阪市民病院においては、病院の持ち出しにはなりますが、この遺伝子検査を(検査技師さんに無理をお願いすることになりますが)院内で数日でやってしまうことができる日本でも数少ない医療機関の1つです。どうしても早く治療しなければならないような患者さんが来た場合は、速やかに遺伝子検査を行うことができます。  食欲不振と腰痛を主訴にゴールデンウィーク直前に転院してきた患者さんがいます。他病院で消化管の検査を受けましたが、特に食欲不振につながるような所見はなく、腰部に肺がんの転移が疑われるとのことで、当院に転院してきたわけです。頭部MRIを撮影すると、造影MRI検査にて、直接の脳転移は無いものの脳の表面に、高信号の線状陰影が目立ち、癌が髄膜に播種した癌性髄膜炎と診断しました。食欲不振の 肺癌患者さんを見かけた時、脳転移や癌による髄膜炎を鑑別に入れることが大切です。病状はかなり進行しています。肺の組織をとって、遺伝子の検査を行うと、組織の検査自体がゴールデンウィーク明けになり、治療開始できるのは、おそらく5月の下旬以降になると判断しました。それまで待つ余裕はありません。  そこで、髄液検査を行うため、腰椎穿刺を行いました。髄液からは、がん細胞が検出され、肺がんによる髄膜炎が診断されます。髄液の検体を院内で行うことができる次世代シーケンサー(NGS)で検査を行うと、なんと分子標的薬がよく効くEGFR遺伝子変異が見つかったわけです。髄液への移行性が良い「オシメルチニブ」と言う薬で、ゴールデンウィーク中に治療開始することができました。  通常ですと、5月下旬以降にならないと治療開始できない。しかしながら、状況が悪くて、それまで待てない人、そのような患者さんは大勢います。我々の病院では、病院負担にはなりますが、患者さんの救命第一に、ゴールデンウィーク中にも必要ならば、遺伝子検査を行い、積極的な治療を行うようにしています。手前味噌にはなりますが、おそらくこのようなことができる病院は、日本でも我々の病院位かもしれないと自負しています。  ゴールデンウィーク中にも、医療を支えてくれる病院の看護師さん、検査技師の先生方、この場を借りて非常に感謝しております。 ***************************** ドクター畑地の診察室190.2023.5.7号 毎週日曜日お昼に配信予定です。 次号は2023.5.14.です。 お問合せ、感想などはコチラまで zm.magumagu@gmail.com 畑地 治 https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 https ://mie-matsu-kokyuki.mars.bindcloud.jp/ https://www.facebook.com/mch.respiratory.center/ 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ***************************** ★お知らせ★ 好評発売中『ドクター畑地の診察室』バックナンバー 1ヶ月分を220円で購入できます。気になった号がある方はぜひチェックしてみてください! ◆2023年04月 https://www.mag2.com/archives/0001688238/2023/04

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